派遣料金の引き上げをめぐり価格カルテルを結んだ疑いが強まったとして、公正取引委員会が人材派遣業界の大手五社に対して独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を実施したことが関係者への取材で明らかになった。人材派遣業界に対する公正取引委員会の立ち入り検査は初めてのこととみられ、業界全体に大きな衝撃が走っている。
立ち入り検査の対象となったのは、パーソルテンプスタッフ、リクルートスタッフィング、スタッフサービス、マンパワーグループ、アデコの五社である。いずれも日本の人材派遣市場において圧倒的なシェアを持つ最大手企業であり、これらの企業が結託して派遣料金を引き上げていた疑いが浮上している。
関係者によると、五社は数年前から派遣料金の引き上げについて価格カルテルを結んでいた疑いがあるという。企業間で事前に協議した上で料金を引き上げることで、顧客企業が他社に乗り換えることを防ぎ、業界全体として高い利益水準を維持していた構図が浮かび上がっている。
特に問題視されているのは、派遣料金の引き上げ分が派遣社員の賃上げに十分に反映されていなかった可能性があるという点である。企業側が料金引き上げによる増収分を自社の利益に回し、実際に現場で働く派遣社員の待遇改善にはつながっていなかったとすれば、労働者の権利を著しく損なう行為として厳しい処分が予想される。
人手不足を背景に日本の人材派遣市場は拡大を続けており、その市場規模は年々増大している。企業の人材確保が困難さを増すなかで派遣労働への依存度は高まる一方であり、派遣業界の公正な競争環境の確保は労働市場全体の健全性に直結する重要な課題となっている。
公正取引委員会は今回の立ち入り検査で得られた資料や証拠を精査し、独占禁止法違反の事実が確認されれば排除措置命令や課徴金納付命令などの行政処分を科す方針とみられる。カルテルの規模や期間によっては数百億円規模の課徴金が科される可能性もある。
今回の摘発は、これまで比較的規制の目が行き届きにくかった人材派遣業界に対する公正取引委員会の監視強化の姿勢を明確に示すものとなった。業界関係者の間では、今回の検査をきっかけに派遣料金の適正化と派遣社員の待遇改善に向けた議論が加速するとの見方が広がっている。
