中国北部の河北省承徳市で、接近した台風九号の影響により降り続いた雨で大規模な洪水が発生した。市の中心部でも道路が茶色く濁った濁流にのみ込まれ、本来は車が行き交うはずの通りが川のようになった。その水の勢いは激しく、駐車していたとみられる複数の車が次々と押し流されていく様子も確認されている。ふだんは山あいの穏やかな街並みが広がる内陸の都市が、短時間のうちに一変し、住民たちは足止めを余儀なくされ、自宅や店の中から変わり果てた光景を見つめるほかなかった。
洪水が起きたのは十二日で、台風九号の接近に伴って雨が長時間降り続いたことが原因とみられている。二十四時間の雨量は承徳市で二二六・九ミリに達し、この地域としては記録的な豪雨となった。海から離れた内陸の山あいに位置する街にまで台風の影響がおよび、これほどまとまった雨が一気に降ったことで、川や側溝では水があふれ、市街地の広い範囲へと一気に水が押し寄せる事態となった。排水が追いつかず、低い土地に向かって水が容赦なく流れ込み、被害は瞬く間に拡大していった。
この豪雨により、承徳市では広い範囲にわたって住宅が浸水した。押し寄せた水の勢いは強く、水位は最も高いところで三メートルにまで達したという。多くの家屋では一階部分が完全に水につかり、家財道具や生活用品が濁った水に浸されるなど、住民の暮らしに直接的な打撃を与えた。低い土地に立つ建物ほど被害は深刻で、街のあちこちで見慣れた風景が濁流の下に沈み、住民は自宅にとどまることも難しい状況に追い込まれ、水はなかなか引かないまま時間だけが過ぎていった。
急激に水位が上がったため、逃げ場を失った住民の中には、自宅の二階部分や屋根の上に一時的に取り残された人もいたとされる。一階から水が迫るなか、より高い場所へと避難してその場にとどまり、水が引くのを待ったり、救助の手が差し伸べられるのを待ったりするしかない住民の姿があった。街全体が水につかったことで移動の手段も限られ、取り残された人々をどう安全な場所へ運び出すかが、当面の大きな課題となっており、救助が届くまで住民は不安な時間を強いられた。
洪水の影響は住宅だけにとどまらず、一部の地域では断水や停電も発生した。水道や電気といった生活の基盤となるライフラインが寸断されたことで、飲み水の確保や連絡手段の維持が難しくなり、被災した住民はより厳しい状況に置かれている。夜間に停電した地域では周囲が暗闇に包まれ、浸水した街の中で不安な時間を過ごした人も少なくないとみられる。復旧作業と並行して、孤立してしまった地域への支援をどう滞りなく届けるかが、大きな課題として問われている。
一方で、この洪水による具体的な被害の全容や、けが人などの人的被害の有無については、これまでのところ当局から詳しい発表はなされていない。浸水した範囲が広く、現地では今なお水が残っている場所もあるとみられ、被害の確認そのものに時間を要している状況だ。台風の季節を迎え、海から離れた内陸の街でも記録的な大雨による洪水が起こりうることをあらためて示した形で、今後の被害状況の把握と住民の安全確保が急がれている。
