参議院の委員会で、障害のある人たちが平和への願いをつづった手紙が紹介された。武器輸出などへの不安と平和への思いを総理に届けたいとの呼びかけに、全国から百十四通の手紙が寄せられ、このうち実名での紹介に同意した十一名分が資料として配布された。質問に立った議員は、高市総理に対し、こうした声にしっかりと向き合うよう求めた。
傍聴に訪れた視覚障害のある藤原久美子さんの手紙では、「私たちは不良な子孫とされ、身体を傷つけられ、生と生殖の権利も奪われてきた」とつづられていた。十年前の津久井やまゆり園事件で示された「障害者は不幸しか生み出さない」という優生思想が今も社会に根付いていると指摘し、「戦争のできる国にしないでほしい」「私たちの存在こそが平和を体現している」と訴えた。
知的障害のある須藤銘さんは、手紙に「戦争は絶対に反対」と記した。自立生活を送る中尾恵子さんは、「いらない命があると考える社会は戦争と地続きだ。いったん命に価値の差を認めてしまえば、すべての人がいるかいらないかで振り分けられてしまう」と、命の選別への懸念をつづった。
議員は、十年前に起きた津久井やまゆり園の事件が、障害者施設という特別な場所で特殊な凶悪犯が起こした極めて例外的な事件として扱われてきたと振り返った。事件から十年がたつ今も政府の対応は不十分だとし、意思疎通ができない重度の障害者を「不幸」とみなす優生思想が背景の一つにあったことは明らかだと述べた。
その上で議員は、国連の障害者権利委員会が、優生思想に基づく考え方に対処する観点から人権侵害の事案を見直すよう日本政府に勧告していることを挙げた。裁判所とは別に、政府から独立して人権侵害からの救済や調査、立法や行政への提言などを担う「国内人権機関」を設置し、優生思想を背景としたやまゆり園事件の包括的な検証を今すぐ行うべきだと総理に迫った。
これに対し高市総理は、国内人権機関の設置を含めた人権救済制度のあり方について、これまでなされてきた議論を踏まえつつ法務省で不断に検討していると承知していると答弁した。個別の法律に基づいてきめ細やかな人権救済を進め、誰一人取り残さない対応に万全を期すことが政府の責務だとの考えを示した。
議員は、一通に何時間もかけて自分自身の言葉で書かれた百十四通の手紙を、郵送ではなく障害当事者の代表から総理に直接手渡したいと要望し、総理は受け取る日時や場所について議員の事務所と相談したいと応じた。一方で総理は、平和を願う声に向き合うとしつつ、厳しさを増す安全保障の現実を直視し、防衛力を抜本的に強化する必要があるとの考えも重ねて示した。
