軍事クーデター以降、アセアン=東南アジア諸国連合の主要な会議への参加を認められてこなかったミャンマーの外相が、タイで開かれた非公式のアセアン外相会議に対面で出席した。二〇二一年のクーデターを受けてミャンマーの高官が締め出されて以来、外相がこうした場に直接姿を見せるのは初めてで、長く膠着してきたミャンマー情勢をめぐる地域外交にとって大きな転機となった。アセアンがこれまでの排除の姿勢を改め、関与へと方針を転換したことを象徴する動きとして受け止められている。
会議はタイで十二日、非公式の形で開かれ、ミャンマーを含む加盟各国の外相らが一堂に会した。正式な首脳会議や外相会議とは異なる非公式の枠組みをあえて選んだ背景には、ミャンマーの扱いをめぐって割れてきた加盟国の立場を過度に刺激せずに対話の糸口をつくろうという狙いがあるとみられる。硬直した状況を動かすため、まずは肩の力を抜いた場で顔を合わせ、意思疎通の回路を確保することを優先した形だ。この場でミャンマー側と直接向き合うこと自体が、これまでにない一歩と受け止められている。
ミャンマーでは二〇二一年に軍が実権を握るクーデターが起き、これを受けてアセアンはミャンマーの軍政の代表を首脳会議など主要な会議の場から事実上締め出してきた。政治指導者や外相といったハイレベルの出席を認めず、非政治的な実務者の参加にとどめる対応を続けることで、暴力の停止や対話の進展を促そうとしてきた経緯がある。今回、外相が対面で出席したことは、その厳しい姿勢に明確な変化が生じたことを意味しており、四年あまり続いた締め出しの構図が転換点を迎えたことをうかがわせる。
会議でアセアンは、ミャンマーに対して求めてきた五項目の合意の重要性を改めて強調した。この合意には、暴力の即時停止をはじめとする複数の要求が含まれており、アセアンはクーデター直後からその履行をミャンマー側に働きかけてきた。しかし実際には合意の実行はほとんど進まず、地域機構としてのアセアンの調停能力が問われる状況が続いてきた。今回の会議でも、この五項目が引き続きミャンマーへの対応の土台であることが確認され、合意の実行が依然として最大の課題であるとの認識が共有された。
一連の対応から浮かび上がるのは、アセアンがミャンマーをめぐる方針を排除から関与へと転換させつつあるという構図である。長期にわたって主要会議から遠ざけてきた強硬な姿勢だけでは事態の打開につながらなかったとの判断があるとみられ、直接対話を通じて影響力を保とうとする現実的な選択に傾いた。締め出しを続けるよりも、対話の席に着かせることで具体的な行動を引き出そうという狙いがうかがえ、地域機構としての関与のあり方を模索する動きといえる。
ミャンマー情勢は、クーデター以降、国内の不安定な状況が長期化し、アセアンが掲げてきた合意も十分に実行されないまま推移してきた。加盟国の間ではミャンマーへの向き合い方をめぐって温度差もあり、地域の結束を保ちながらどのように関与していくかが難しい課題となってきた。今回の非公式会議は、そうした行き詰まりを動かすための試みと位置づけられ、途絶えがちだった対話を再び軌道に乗せるための地ならしの意味合いを帯びている。
対面での外相出席というかたちで一歩を踏み出したアセアンにとって、次の焦点は、この関与がミャンマー側の具体的な行動にどこまで結びつくかである。暴力の停止や対話の前進といった課題で目に見える成果が伴わなければ、方針転換に対する批判が強まる可能性もある。非公式という慎重な入り口から始まった今回の接触が、膠着した情勢を実際に動かす契機となるのか、それとも一時的な融和にとどまるのか、地域内外の関心が集まっている。
