自宅マンションに火をつけ、父親を殺害したなどの罪に問われていた息子に、無罪判決が言い渡されました。父親殺害という重い罪に問われた裁判だっただけに、判決の行方が注目されていました。事件の現場周辺を取材すると、この裁判では介護というキーワードが大きく浮かび上がってきました。
この事件で、自宅に火をつけ、父親を殺害したなどの罪で逮捕・起訴されていたのが、息子の高橋正男被告です。被告は、自宅マンションへの放火と父親の殺害という罪に問われ、これまで裁判で争われてきました。そして今回、その被告に無罪が言い渡されたことになります。
これまでの裁判で検察側は、被告が置かれていた状況を詳しく主張してきました。その中心にあったのが、被告が父親の介護をしながら、次第に生活に困窮していったという見立てです。介護と暮らしの厳しさが、事件をめぐる大きな背景として位置づけられていました。
近所の住民によりますと、現場には以前、被告とその両親、そして妹の四人が暮らしていました。その後、父親の介護が必要となるなかで、母親は特別養護老人ホームに入所します。ここから、被告と父親は二人で暮らし始めることになりました。
ところが、間もなくして父親が意識障害を起こし、寝たきりの状態になったといいます。父親は、七段階ある要介護認定のうち、最も重い要介護五でした。被告は、最も手厚い介護が必要な父親を抱えながら、二人での生活を続けていくことになりました。
検察側は、被告の生活の厳しさについても訴えてきました。寝たきりの父親に対しては、ヘルパーによる訪問看護などのサービスが始まっていました。一方で被告人自身は収入がなく、借金も抱え、父親や母親の年金などによって生活していたとされます。被告はエアコンを使わず、ガスの契約も解約していたといいます。
被告は次第に、介護が大変だと口にするようになっていったとされます。訪問看護師からは短時間の施設利用も提案されましたが、被告は金がかかるとして断っていたといいます。電気、ガス、携帯電話と、最終的には三つのライフラインが断たれていました。こうした介護と困窮の経緯が問われた裁判で、被告には無罪が言い渡されました。なお、裁判長は放火と殺人については無罪とした一方で、窃盗の罪については有罪と認定し、被告に懲役一年八か月、執行猶予四年を言い渡しました。
