堅苦しいものと思われがちだった着物が、いま若い世代の手で自由によみがえっている。現代風の着こなしや手軽なレンタル、そして古い一着を生かす工夫まで、その新しい潮流をたどる。
着物と聞くと、成人式や結婚式といった特別な日にだけ袖を通す、どこか堅苦しい装いを思い浮かべる人が多いかもしれない。着付けが難しく、値段も高い。そんなイメージから、日常とは縁遠い存在になっていた時期も長く続いていた。ところが今、その着物が思わぬ形でよみがえりつつある。
その立役者となっているのが、ほかならぬ若い世代である。彼らは着物を、伝統を重んじる堅い装いとしてではなく、自分らしさを表す自由なおしゃれとして、軽やかに楽しみはじめている。今回は、こうした着物をめぐる新しい潮流について、その着こなしや楽しみ方をやさしくひもといていきたい。
自由で新しい着こなし
近ごろの若い人たちの着こなしには、従来の決まりごとにとらわれない、のびやかな発想があふれている。たとえば、着物の足元にあえてスニーカーを合わせたり、下にデニムを重ねたりと、和と洋を大胆に混ぜ合わせる。そんな自由なひと工夫が、大きな支持を集めているのである。
選ばれる着物の柄にも、時代の変化がうかがえる。古典的な模様だけでなく、はっとするような現代風の大胆な柄や、かわいらしい色使いのものが人気を呼んでいる。決まった型にはめるのではなく、自分の好みや個性を映し出す一着を選ぶ。そうした楽しみ方が、若い世代に広く根づきつつある。
手軽に楽しめるレンタル

着物人気を支えているもう一つの立役者が、気軽に利用できる貸衣装の仕組みである。とりわけ京都や東京の古い町では、観光がてら着物を借りて街を歩く人の姿が、すっかりおなじみの光景となった。自分で一式そろえなくても、その日一日だけ着物姿を楽しめる手軽さが、大きな魅力となっている。
こうした店では、着付けから髪のセットまでを一通りまかせられることが多く、着物に不慣れな人でも安心して利用できる。ふだんとは違う装いに身を包み、なじみのある街並みを歩けば、見慣れた景色さえも新鮮に映る。旅の思い出づくりとしても、こうした体験は根強い人気を保っている。
受け継ぎ、生まれ変わる一着
着物の新しい楽しみ方は、装うことだけにとどまらない。近年、限りある資源を大切にする意識の高まりとともに、古い着物に再び光を当てる動きが広がっている。何十年も前に仕立てられた上質な着物を、手ごろな値段で買い求め、大切に着る若い人が増えているのだ。
さらに、傷んでしまって着られなくなった着物の生地を、まったく新しいものへと生まれ変わらせる試みも盛んである。美しい絹地を仕立て直して洋服にしたり、かばんや髪飾りといった小物に作りかえたり。こうした工夫は、先人の技と美しさを未来へとつないでいく、心温まる営みでもある。
伝統を今の暮らしへ
かつては遠い存在に思えた着物が、こうして少しずつ、私たちの日常へと近づいてきている。堅苦しい決まりごとに縛られるのではなく、まずは気軽に袖を通し、その心地よさや美しさを自分なりに味わってみる。そんな向き合い方が、着物という文化に新たな息吹をもたらしているのである。
長い歴史のなかで育まれてきた和装の美しさは、装う人の工夫次第で、いくらでも新しい表情を見せてくれる。伝統を重んじつつも、堅く考えすぎない。そんなしなやかな付き合い方こそが、この美しい衣装を次の世代へと受け継いでいく、確かな道すじになるのだろう。

Keep subscribing to 松村香織Her next filing reaches you the moment it publishes, on her own subdomain.
Subscribe
