長野県安曇野市で八月八日夜、大雨に伴う土石流が発生し、県道に架かる黒川橋が押し流された。橋の先にある山あいの宿泊施設に滞在していた登山者や従業員ら約三百九十人が一時、下山できない孤立状態となった。安曇野市は北アルプスへの玄関口の一つとして知られ、夏山シーズンで登山客が多く訪れる時期に起きた災害となった。
気象庁によると、安曇野市では八日午後八時までの一時間に五十四・五ミリの猛烈な雨を観測した。暖かく湿った空気が流れ込んで大気の状態が不安定になり、局地的に激しい雨が降ったとみられる。この大雨で山の斜面から大量の土砂や岩が一気に流れ下り、黒川沢沿いの県道を直撃した。
土石流は県道に架かる黒川橋を押し流し、橋の周辺の路面をえぐった。県は八日午後八時半から、この県道のおよそ十二・二キロの区間を通行止めとした。橋が失われたことで、その先にある山小屋や温泉宿への車での行き来ができなくなり、宿泊していた人たちが取り残される事態となった。
孤立状態となったのは、黒川橋の先にある三つの宿泊施設に滞在していた登山者や従業員ら約三百九十人だった。いずれも北アルプスの燕岳や槍ヶ岳などへ向かう登山口に近い山あいの施設で、夏の登山シーズンに合わせて多くの利用客が訪れていた。施設側は取り残された人たちの安全確保にあたった。
県は九日、流された橋の代わりに仮設の橋を設置する応急工事を進めた。同日午後には歩行者が通行できるようになり、孤立していた登山者らが徒歩で下山を始め、孤立状態はほぼ解消された。県は今後、一週間から二週間をめどに、車両も通行できるよう本格的な応急復旧を進める方針だという。
今回の土石流で、これまでのところ巻き込まれたり、けがをしたりした人は確認されていない。流された車両や損壊した住宅も報告されておらず、人的被害を伴わなかった。夜間から未明にかけての孤立となったが、施設側と自治体の対応で大きな混乱は避けられた。
安曇野市を含む長野県内では、夏の登山シーズンに合わせて多くの人が北アルプスを訪れる。局地的な大雨が短時間のうちに土石流を引き起こし、山あいの一本道が寸断されると、登山者や宿泊客が一時的に孤立する危険がある。今回は仮設の橋の設置で早期に孤立が解消されたが、車両の通行再開にはなお時間がかかる見通しだ。
