ただ歩くだけではなく、速さに緩急をつける。日本の研究者が育ててきたこの歩き方が、年齢を重ねても元気に過ごすための知恵として注目されている。その仕組みと続けるこつをやさしくひもとく。
健康のために何か運動を始めたいと思っても、いざとなると、なかなか一歩を踏み出せないという人は少なくないだろう。特別な道具をそろえたり、わざわざ施設に通ったりするのは、思いのほか気が重いものである。けれども、私たちが毎日ごく当たり前に行っている歩くという動作にこそ、実は健康を支える大きな力が秘められている。
日本は、世界のなかでも長く生きる人が多い国として知られている。そして近年、ただ長く生きるだけでなく、心身ともに元気なまま過ごせる期間、いわゆる健康寿命をいかに延ばすかという点に、大きな関心が寄せられている。今回は、その鍵をにぎるとも言われる、日本発の歩き方の工夫について、やさしくひもといていきたい。
歩くことが根づいた暮らし

そもそも日本の暮らしには、歩くという習慣が自然と溶け込んでいる。多くの都市が鉄道を中心に発展してきたため、人々は駅まで歩き、乗り換えのために構内を移動し、階段を上り下りする。こうした日々のなかで、知らず知らずのうちに、かなりの距離を自分の足で歩いているのである。
車での移動が中心となる暮らしと比べれば、その差は決して小さくない。毎日の通勤や買い物、ちょっとした用事のたびに足を動かすことが、積み重なって大きな運動量となる。特別な運動をしていないつもりでも、日本で暮らす多くの人は、実は日常のなかでよく歩いているのだ。この土台があることは、大きな強みといえるだろう。
緩急をつけるという工夫
そんな歩くという行為に、さらにひと工夫を加えたのが、日本の研究者たちが育ててきた歩き方である。その考え方はとても分かりやすい。少し息がはずむくらいの速さで歩く時間と、ゆっくりと楽な速さで歩く時間とを、交互に繰り返すというものだ。ずっと同じ調子で歩くよりも、この緩急が体によい刺激を与えるとされている。
たとえば、数分間きびきびと速く歩いたあと、また数分間ゆったりと歩く。これを何度か繰り返すだけである。速く歩くときは体にほどよい負荷がかかり、ゆっくり歩くあいだに息を整えられる。無理なく続けられて、しかも効果が期待できるという点が、この歩き方の大きな魅力となっている。
研究が示す手ごたえ
この歩き方については、日本の研究の場でもさまざまな検討が重ねられてきた。同じ速さで歩き続けるのに比べ、緩急をつけた歩き方のほうが、加齢にともなって起きやすいいくつかの変化に対して、よい働きをする可能性が示されている。血圧の上がりやすさや、脚の筋力の衰えといった点への影響が調べられてきた。
もちろん、こうした研究の成果は、誰にでも同じ結果を約束するものではない。体の状態は人それぞれであり、持病がある場合などは、無理をせず専門家に相談することが欠かせない。それでも、身近な歩くという行為に少しの工夫を加えるだけで、前向きな手ごたえが期待できるという知らせは、多くの人にとって心強いものだろう。
続けるためのささやかな心がけ
どんなに体によい習慣でも、続かなければ意味がない。まずは短い時間から始めて、少しずつ体を慣らしていくのがよいだろう。毎日きっちり行おうと気負いすぎず、週に何度か、できる範囲で歩くくらいの気持ちのほうが、かえって長続きしやすい。景色を楽しみながら歩けば、気分もおのずと晴れやかになる。
歩くこと以外にも、健康を支える暮らしの工夫はたくさんある。緑の濃い野菜をしっかりとること、十分な睡眠を心がけること、そして心穏やかに過ごすこと。そうした小さな積み重ねが、やがて大きな違いを生んでいく。まずは今日、いつもより少しだけ足取りを速めて歩いてみることから、始めてみてはどうだろうか。

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