サンローランの約10年間の幕引きと、キム・ジョーンズによる新ブランドの再始動。2026年10月のパリが示す、ファッション業界の権力移転と未来の姿を深掘りする。
2026年10月9日、サンローランはアンソニー・ヴァカレロの退任を正式に発表した。彼の在任期間は約10年。直前の9月29日、エッフェル塔を望む会場で開催された2027年春夏コレクション「金色のショー」が、メゾンを去る直前の最後の舞台となった。
これは単なる人事異動ではない。エディ・スリマンの時代から続くブランドの急成長を牽引してきた存在の離脱だ。売上は2022年に33億ユーロに達し、就任前の3倍以上に拡大したサンローランが、次期デザイナーの発表を控え、ファッション業界全体に緊張と期待を走らせている。
金色のカーテンコール、10年の軌跡
ヴァカレロの最後のランウェイは、3つの巨大なシャンデリアの下でゴールドを主役にした華やかなルックで構成されていた。肩の張ったテーラリングやレザー、センシュアルなドレスを通じて、創業者イヴ・サンローランのスタイルを現代的に解釈してきた彼の美学が、ここでは最高潮に達していた。
親会社ケリングのCEOルカ・デ・メオは、彼の10年間の貢献に感謝の意を表明し、ブランドの発展に果たした役割を高く評価している。2023年には映画製作部門「サンローラン・プロダクションズ」も設立され、ファッションを超えた文化としての存在感を築いてきた。

後任候補、シェミナ・カマリの可能性
米WWDによると、現在クロエのクリエイティブ・ディレクターを務めるシェミナ・カマリが有力視されているという。彼女は2016年からアンソニーの下でサンローランのウィメンズ・プレタポルテのデザインディレクターを務めており、ブランドの内情を最も深く理解する人物の一人だ。
2023年10月にクロエへ移籍して以来、彼女がサンローランの新しい風を吹き込むのか、それとも別のサプライズが起こるのか。サンローランは後任を正式に発表していないが、ファッション界の注目は彼女に集まりつつある。

キム・ジョーンズ、自分の名で再始動
同じ頃、イギリス人デザイナーのキム・ジョーンズが、2008年に閉鎖した自身の同名ブランドを再始動すると発表した。ディオールメンズでの7年間、フェンディでの4年間を経て、彼は2027年秋冬コレクションを新ブランドとしてリリースする予定だ。
「多くの素晴らしいメゾンやコラボレーターと働いてきた後、自分の名前で何かを始めるのはまさに今が時だと思う」とジョーンズは述べている。ロンドンのスタジオでデザインされ、主に日本で生産されるこのコレクションは、ファッション、アート、デザインの融合を目指す。

パリコレが示した2027年のトレンド
ヴァカレロの退任発表とジョーンズの独立という業界の大きな動きの中、2027年春夏のパリ・ファッションウィークでは、従来のクワイエット・ラグジュアリーから一転、より個性的で大胆なスタイルが台頭していた。ベルトを極端に低い位置に締めるスタイルや、修道服を思わせるモノクロームのルックが目立った。
ブラックタイのドレスコードに対する自由な解釈も注目された。シャネルのマチュー・ブレイジーやトム・フォードのハイダー・アッカーマンは、型破りかつクールなブラックタイの解釈を提示し、フォーマルな装いに遊び心を加える重要性を示した。
業界の未来は、誰の手で描かれるのか
サンローランの次期リーダーの決定と、キム・ジョーンズのブランド再始動は、ファッション業界が新しいフェーズに入ったことを示している。ブランドのアイデンティティをどう継承し、どう進化させるかが、デザイナー個人のビジョンに委ねられている。
2027年春夏のパリコレで示されたトレンドは、この変化を反映するものだった。よりパーソナルで、より表現力豊かなスタイルが求められる今、業界の中心で何が起きているのかを注視し続ける必要がある。
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