2024年に始まった新しいNISA。累計の買付額は約65兆円に達し、多くの人が長期の資産形成に取り組んでいます。最新のデータから、その使われ方の特徴を読み解きます。
かつて日本人は貯蓄好きな国民として知られ、そのお金の多くは銀行預金に眠っていました。しかし近年、その常識が大きく変わりつつあります。国が用意した非課税の投資制度、いわゆる新しいNISAをきっかけに、これまで投資に縁のなかった多くの人が、少しずつ自分のお金を働かせ始めているのです。今回はその使われ方を、最新のデータから読み解いていきます。
新しいNISAとは
新しいNISAは2024年1月に始まった制度で、一定の範囲内で得られた運用益に税金がかからないのが大きな特徴です。制度には二つの枠が用意されており、コツコツ積み立てる「つみたて投資枠」と、より幅広い商品に投資できる「成長投資枠」があります。この二つを組み合わせることで、初心者から経験者まで、自分に合った形で資産形成に取り組めるようになっています。
広がる利用
制度の普及ぶりは目覚ましいものがあります。NISA口座の数はすでに二千万を大きく超える水準に達しており、投資が特別なものではなくなりつつあることをうかがわせます。政府はさらに利用を広げようと、2027年末までに口座数を三千四百万まで増やすという目標を掲げています。多くの家庭にとって、投資がより身近な選択肢になろうとしているのです。
積み上がる買付額
お金の動きを見ると、その勢いはさらにはっきりします。金融庁などの資料によれば、NISAを通じた累計の買付額はおよそ六十五兆円に達しました。新しい制度が始まる直前、2023年末の時点では約二十四兆円でしたから、わずかな期間で四十兆円あまりも増えた計算になります。人々のお金が、預金から投資へと着実に動いていることが分かります。
成長投資枠が人気
どのように使われているのかを見ると、興味深い傾向が浮かび上がります。証券会社十社を対象とした2026年一月から三月の調査では、NISAでの買付額のうち実に七十九パーセントが成長投資枠を通じたものでした。また、買付額全体の四十四パーセントは国内株式が占めており、自国の企業に投資したいという意識の強さがにじみ出ています。
全世界株という選択

一方、コツコツ積み立てる「つみたて投資枠」では、また違った特徴が見られます。この枠での買付けのうち、全体の三十七・九パーセントを「日本を含む全世界の株式に投資する投資信託」が占めていました。世界中の企業にまとめて分散投資できる手軽さが、これから資産形成を始める人たちに強く支持されていることがよく分かります。
国内株への関心
同じデータでも、成長投資枠に目を向けると事情は異なります。こちらでは国内株式が四十八・二パーセントと、半数近くを占めていました。個別の日本企業の株を自分で選んで買いたいという投資家が、この枠を積極的に活用している様子がうかがえます。積み立てで世界に分散しつつ、成長枠で応援したい企業に投資するという使い分けも見えてきます。
長期保有の姿勢
もう一つ注目したいのが、多くの人が長い目で投資に向き合っている点です。調査によると、つみたて投資枠では六十四・五パーセント、成長投資枠でも五十六・四パーセントの人が、一度も売却していないと答えています。短期的な値動きに一喜一憂せず、じっくりと資産を育てようとする姿勢が、着実に根づきつつあることがうかがえます。
なぜ人気なのか
これほどまでに新しいNISAが支持される背景には、いくつかの理由があります。運用益が非課税になるという税制上の魅力はもちろん、スマートフォンのアプリなどを使えば少額から手軽に始められる点も大きな後押しとなっています。かつては敷居が高いと感じられた投資が、誰にとっても身近な存在へと変わりつつあるのです。
注意すべき点
ただし、良いことばかりではないことも忘れてはなりません。投資である以上、当然ながら値下がりして損をする可能性もあります。特に、近い将来に使う予定のあるお金を投資に回すのは避けるべきだとされています。生活に必要な資金は手元に確保したうえで、余裕のある範囲で取り組むことが、失敗を避けるための基本といえるでしょう。
自分に合った使い方
大切なのは、制度をうまく利用して自分らしい資産形成を進めることです。安定を重視するのか、ある程度のリスクを取って高い成長を狙うのか、その答えは人によって異なります。まずは無理のない金額から始め、自分の目標やリスクへの考え方をよく整理することが、賢い一歩を踏み出すための何よりの近道となります。困ったときは、信頼できる情報源や専門家に相談するのもよい方法です。
新しいNISAの広がりは、日本のお金に対する意識が静かに、しかし確実に変化していることを示しています。預金一辺倒だった時代から、自ら考えてお金を育てる時代へ。この流れをうまく生かせるかどうかは、一人ひとりの学びと工夫にかかっています。焦らず、着実に。無理をせず続けることが、それが豊かな未来への確かな一歩となるはずです。私たちのお金との向き合い方は、これからも進化を続けていくのでしょう。

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