日本企業の生成AI活用は2026年春に87%へ達したが、調査は効果の実感や成果への還元という次の壁を指摘する。規制はソフトローを軸としたAI推進法が基盤となっている。
2026年、日本企業にとって生成AIはもはや特別な存在ではなくなりつつある。各種の調査では、活用の裾野が大きく広がっている様子がうかがえる一方で、その効果を十分に引き出せているのかという、新たな課題も同時に浮かび上がってきた。導入そのものから、いかに成果へとつなげるかへ。国内の議論の焦点は、少しずつ次の段階へと移り始めている。
活用率は87%に到達

まず目立つのは、活用の広がりそのものだ。PwC Japanグループの「生成AIに関する実態調査2026春」によると、日本企業における生成AIの活用や推進の度合いは87%に達し、前回の調査からは11ポイント上昇した。まだ手をつけていない、あるいは一度は断念したという企業は、わずか4%まで減っているという。数字の上では、導入はかなり一般的なものになってきた。
国際的に見ても、日本は決して遅れをとっているわけではない。同じ調査による6カ国の比較によると、活用の推進度は米国が90%、英国が89%、中国が91%、ドイツが89%、韓国が93%となっており、日本の87%という数字は、これらの主要国と比べても大きくは変わらない水準にあるといえる。導入の入り口では、ほぼ横並びの状態にある。
広がる一方で見える効果の壁
ただし、活用が進むことと、実際に成果が出ることは、まったく別の話である。調査によると、生成AIを活用している企業のうち、「期待通り」または「期待を大きく上回る」と答えた割合は64%だった。その一方で、「期待を大きく上回る」とまで答えた企業は、わずか9%にとどまっている。手ごたえの中身には、なお差があるようだ。
この9%という数字は、国際的な比較で見ると見劣りする面がある。報告によると、期待を大幅に上回る効果を得たとする割合は、米国が38%、英国が32%に達しており、日本との差は決して小さくない。活用の推進度そのものは主要国と同じ水準にあっても、そこから得られる成果の実感には、はっきりとした開きが見られる。
効果が出るまでの時間差
効果が表れるまでの時間の感覚にも、国による違いがある。調査によると、1年以内に効果が出ると見込む割合は、米国が66%であるのに対して、日本は41%にとどまった。日本では「3年以上かかる」、あるいは「時期はよく分からない」とする回答が、相対的に多くなっているという。成果を急がない、慎重な姿勢もうかがえる。
生み出した効果を、次にどう回していくかという点にも課題が残る。報告によると、創出した効果を従業員への利益の還元や、顧客への価格の還元につなげている割合は、日本が40%と最も低い水準だった。米国の75%、英国の74%と比べると、その差はかなり大きく、成果を社内外へ広げる段階での弱さが指摘されている。
選択肢から生存条件へ
こうした状況の中で、企業側の受け止め方も少しずつ変わりつつある。今回の調査は、その変化を「AI変革は選択肢から生存条件へ」という言葉で表現している。その根拠のひとつとして、生成AIを「業界の構造を根本から変革するチャンス」ととらえる企業の割合が、30%にまで上昇したことを挙げている。前向きな期待が広がっている。
同時に、危機感のほうも高まっている。報告によると、生成AIによって「自社のビジネスの存在意義が失われる脅威」ととらえる割合も、24%に上昇した。チャンスと脅威、その両方の認識が強まってきたことが、生成AIが単なる技術のテーマから、経営そのものの課題へと変わりつつあることを示していると分析されている。
日本の規制はソフトロー中心
技術の広がりと並んで注目されているのが、ルールづくりの動きである。株式会社AXの解説によると、2025年6月4日には、日本で初めての包括的なAIの基本法とされる「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」、通称AI推進法が成立し、公布された。技術の推進と課題への対応を、同時に見据えた枠組みだとされる。
その特徴は、細かく縛りすぎない姿勢にあるという。解説によると、日本は厳格なルールで事業者を一律に縛るのではなく、ソフトローを基本としながら、部分的にはハードローの要素も取り入れる、ハイブリッドなアプローチをとっている。事業者が自ら課題を管理する、いわゆる「AIガバナンス」の構築が重視されているという。
既存の法律とガイドラインで対応
日本には、生成AIそのものを直接取り締まる単独の法律があるわけではない。報告によると、個人情報保護法や著作権法、不正競争防止法といった既存の法律の枠組みの中でAIの利用をとらえながら、政府が示すガイドラインに沿った自主的な対応を、企業に促していく形がとられている。既存の仕組みを生かした対応だといえる。
具体的な取り組みも、着実に進められている。解説によると、政府はAIを扱う事業者に向けたガイドラインを策定して公表しており、著作権に関する考え方については文化庁が示している。さらに、国による調査や指導、助言といった仕組みも整えられ、企業による自主的な取り組みを後押しする形が組み立てられている。
問われる成果への転換
まとめると、2026年の日本は、生成AIをどれだけ使っているかという点では、世界の主要国とほぼ肩を並べている。だが調査が示すように、その効果をどう実感し、成果として社内や顧客へと還元していくかという、次の壁が待ち構えている。ルールの面ではソフトローを軸としつつ、企業には自律的な対応が求められる。活用の先にある「成果への転換」こそが、これからの日本の大きな課題となりそうだ。

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