スポーツ庁の最新調査で、40代女性の体力が最も大きく低下している実態が明らかになりました。運動しない理由と、今から始めるべき具体的な健康づくりの方法を解説します。
スポーツ庁が2026年10月11日に公表した「令和7年度 体力・運動能力調査」によると、40代女性の体力は25年前の93.6%にとどまっています。これは60代や70代が大幅に向上したのとは対照的に、全年代の中で最も下げ幅が大きいという衝撃的な結果です。働き盛り、子育て世代である40代の体力低下は、20年後、30年後の日本の健康寿命を左右する重大な課題と言えるでしょう。
「面倒くさい」が最大の敵
なぜ40代女性は運動しにくいのでしょうか。スポーツ庁の世論調査(令和6年度)では、女性が運動の頻度を増やせない理由の1位は「面倒くさいから」(30.7%)でした。続いて「仕事が忙しいから」(28.0%)、「家事が忙しいから」(21.1%)が続きます。40代は仕事に加えて家事や子育てが重なる世代であり、自分のための時間はつい後回しになりがちです。
疲れていれば「面倒くさい」と感じるのは当然のことです。「運動」と聞くと、ジムやランニングのように「ちゃんとやるもの」を思い浮かべ、始める前に立ち止まってしまう人も多いでしょう。しかし、やる気がないのではなく、始めるハードルが高いのです。運動したいという気持ちと、実際にしているという現実の間に約14ポイントの差がある40〜50代の女性。このギャップを埋めるには、構えず、気分転換できるような入口が必要です。

「壊さない」健康投資の考え方
プロサッカー選手の三浦知良選手は、55歳当時のインタビューで、疲労をためないことを意識し、パフォーマンスから逆算して1日8時間以上の睡眠を続けたいと語っています。注目したいのは、運動量の話です。以前はやればやるほど調子が上がったが、今は疲れが出すぎて逆効果になると体で覚え、やりすぎに気をつけていると。一方で、やらなければ落ちていくことも難しさだと語っています。
「足し続ける」でも「休み続ける」でもなく、その時の回復力に合わせて量を調整することが、長く続ける条件なのかもしれません。ローリングストーンズのミックジャガーは、80代でも長いステージで走り、踊り、歌います。報道される練習はランニング、水泳、キックボクシング、自転車、ピラティスやヨガで、バレエはバランスのために取り入れているという。本人は週5〜6日トレーニングしつつ、「やりすぎはしない、スタミナのため」という趣旨を語っています。医師のコメントも示唆的ですが、同じメニューの真似より、継続、段階的な負荷の上げ方、回復のほうが大切だと指摘しています。

人とのつながりが継続の鍵
続けるうえで重要なのが、人とのつながりです。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、人の行動に影響するものとして、友人や家族などの人間関係を挙げています。個人だけに働きかけるのではなく、組織や地域の単位でも対策を講じることで、集団全体への効果が高まっていくとされています。
実際に、愛知県岡崎市では、クアの道を「歩く教室」として、子どもたちが地域と健康を学ぶ機会を作り、岐阜市でも、家族向けのイベントを開いて、親子で体力づくりを行うきっかけを作っています。山形県上山市では、続けて参加した住民の医療費が、参加していない住民より1人あたり年間約4.8万円低かったという市の分析もあります。人とのつながりが、健康づくりを単なる義務ではなく、楽しみへと変える力を持っているのです。

今から始める「動けるうち」の習慣
日本の病院では「運動してください」と言われても「何をするか」の指導はされないことが多いです。そんな中で必要なのは、「運動しなきゃ」と構えず、気分転換できることなのかもしれません。例えば、発汗できる速歩、シャドー、エアロバイクの運動範囲は、研究が支持する安全な運動範囲です。高強度で脚を壊しかねない運動ではなく、自分の体力に合わせたペースで、無理なく続けることが大切です。
購入費や設置場所、使わなくなるリスクもある自宅バイクよりも、まず公共ジム、エアロビ、ダンス、シャドーなどで運動頻度と翌朝の体調を観察し、買うのは後でもいいでしょう。行動開始摩擦(Activation Friction)を減らせば、運動を続けやすくなるかもしれません。購入しないことも、将来の選択肢を残す投資判断なのだ。個人解に合わせていずれも一考の価値があるでしょう。
「動く」は、脳も喜ぶ
運動と脳の関係には、第二言語習得への接点もあります。30本の系統的レビューを統合したメタレビューは、1回の運動が幅広い認知機能を促進すると結論づけています。高強度ランニングでは、走った後は語彙学習が20%速かったと報告され、BDNFなどの上昇も最も大きかったとされています。トレッドミル歩行では、語彙を覚える最中の歩行が長期記憶を改善したという研究もあります。
日本の大学生EFL学習者32名を、20分間のトレッドミル歩行群と座って読書する群に分け、その後20個の多語表現(イディオムなど)を学習させた実験では、歩行群は直後テストも1週間後テストも高得点でした。一方で、運動と外国語学習の併用が単独学習を上回らなかった研究もあるため、現時点で言えるのは、「運動で語学力が伸びる」ではなく、「運動直後は覚えやすい状態になる可能性がある」までです。運動は学習の「地ならし」になり得る。でも本体は、入力と練習の質です。
今日からできるn=1実験
研究が支持するのは、脚を壊しかねない高強度ではなく、発汗できる速歩、シャドー、エアロバイクの運動範囲です。例えば、明日の朝、少し早歩きで10分間散歩をする。それだけで、翌朝の身体の状態がどう変わるか観察してみましょう。睡眠時間は変えずに、運動の頻度だけを変えて、自分の身体がどう反応するかを記録する。これが、今日から始められるn=1実験です。
成功者の習慣は、成功した人だけが見える生存者バイアスを含みます。10時間は「真似る数字」ではなく、「自分の回復を観察する問い」として使うのがいいでしょう。40代は、仕事に加えて家事や子育てが重なる世代です。自分のための時間はつい後回しになり、疲れていれば「面倒くさい」と感じるのも無理はありません。しかし、動けるうちからの習慣づくりに力を入れて取り組む必要があります。25年前の93.6%という数字は、過去の出来事ではなく、今から変えられる未来の指標です。今日、少しだけ動く。それが、20年後の自分への投資になるかもしれません。
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