長らく現金主義とされてきた日本で、支払いの風景が大きく変わりつつある。QRコードやICカードの普及を背景に、キャッシュレス化がどこまで進んだのかを数字とともに見ていく。
ほんの少し前まで、日本での買い物といえば、財布からおもむろに現金を取り出して支払うのが、ごく当たり前の光景だった。世界的に見渡してみても、日本は特に現金を強く好む国のひとつとして、長らく広く知られてきた。ところがこの近年、その慣れ親しんだはずの支払いの風景が、想像をはるかに超えるスピードで大きく塗り替えられつつある。
スマートフォンをさっとかざしたり、手持ちのカードを軽くタッチしたりするだけで、支払いのすべてが済んでしまう。そんな現金を使わないキャッシュレスの決済が、今や都会の大型店から街角の小さな商店にまで、驚くほど急速に広がっている。今回は、日本のキャッシュレス化が実際にどこまで進んだのかを、具体的な数字とともにじっくりとたどっていきたい。
変わりゆく支払いの風景

かつての日本では、ある程度の現金を持たずに外出することに、どこか漠然とした不安を感じる人がとても多かった。小さな個人商店ではカードがまったく使えないことも決して珍しくなく、いざという時のために、いくらかの現金を常に用意しておくのが半ば習慣のようになっていた。この根強い現金主義は、長らく日本の消費文化を色濃く特徴づけるものだった。
しかし今、その長く続いた状況は、誰の目にも明らかなほど大きく変わってきている。コンビニやスーパーはもちろんのこと、個人が営む小さな飲食店や商店であっても、現金以外のさまざまな支払い方法が、ごく当たり前のように受け入れられるようになった。財布を持たず、スマートフォンひとつだけで一日を過ごすことも、もはや何ら特別なことではなくなりつつある。
数字で見るキャッシュレス化
この社会全体の大きな変化は、実際の具体的な数字にもきわめてはっきりと表れている。国が行った調査によれば、日々の支払いに占めるキャッシュレスの割合は、近年になって実に急速な上昇を続けているという。ある時点では、その割合は全体のおよそ六割近くにまで達したとされ、それにともなう取引額も膨大なものになっている。
とはいえ、広く世界へと目を向けてみれば、日本にはまだ大きな伸びしろが残されているのも事実である。すぐお隣の韓国や中国では、キャッシュレスの割合がすでに九割前後という高い水準にまで達している国もあるのだ。それらの国々と比べれば、日本はまだ発展の途上にあるものの、その着実な歩みは年を追うごとに確実に速まっているのが現状だ。
QRコード決済の急成長
近年のこの目覚ましいキャッシュレス化を語るうえで、決して欠かすことができないのが、QRコードを使った新しい決済である。スマートフォンの画面に表示したコードを店側に読み取ってもらうだけで支払いが完了するという、この手軽さと分かりやすさが、実に多くの人々の心をしっかりとつかんだ。とりわけ、ある大手のサービスの伸びは、まさに目覚ましいものがある。
この分野を代表するある人気のサービスは、今や登録者数が数千万人という驚くべき規模にまで大きく成長した。毎月実際に利用する人の数も非常に多く、QRコード決済全体のうち、かなり大きな割合を一手に占めている。専用の高価な機器がまったくいらず、小さな個人商店でも手軽に導入できるという点が、こうした爆発的な普及を力強く後押ししている。
ICカードという日本の強み
その一方で、日本にはQRコード決済が広く普及するずっと以前から、他国にはない独自の強みが存在していた。それこそが、主に交通機関などで長く使われてきた、あのICカードの存在である。二千年代のはじめに颯爽と登場したこれらのカードは、電車やバスの便利な乗車券として、いつしか多くの人々の日常生活にすっかり溶け込んでいた。
この非常に便利なICカードは、やがて交通機関という枠の外へと、その活躍の場を大きく広げていくことになった。今ではもう、身近なコンビニや飲食店、さまざまな小売店においても、カードをほんの軽くかざすだけで簡単に支払いができる。長い年月をかけて丁寧に築かれてきたこの土台こそが、日本のキャッシュレス化を静かに、しかし力強く支える大きな原動力となっているのだ。
これからの目標
国もまた、この社会的なキャッシュレス化の大きな流れを、政策として積極的に後押ししている。かつて掲げられていた当初の数値目標は、実はすでに前倒しの形で難なく達成されてしまった。そして今、政府はそこからさらに高い新たな数値目標を設定し、社会全体のキャッシュレス化を、これまで以上にいっそう強く推し進めようとしている。
もちろん、昔ながらの現金には現金ならではの確かな良さもあり、それが世の中から完全に消えてなくなることは、当面のあいだはまずないだろう。それでも、日々の支払いの主役が、少しずつ現金から新しい手段へと移り変わっていくこの大きな流れは、もはや誰にも止められそうにない。私たちの財布の中身は、これからも静かに、しかし確実に変わり続けていくにちがいない。

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