ニュージーランド戦の即席4バックは、3バック偏重が生んだ構造的な穴を露呈させた。電通の統合戦略と並ぶ、日本サッカーの深刻な課題。
2026年10月4日、ニュージーランド戦。スコアは2対1の勝利だが、内容は惨憺たるものだった。森保一監督は会見で、この第4戦に4バックを試した意図を明かす。アジアカップに向けた予行演習であり、当初からの計画だとされる。しかし、その計画の裏には、長年の体制維持がもたらした深刻な人材不足という暗い影が横たわっていた。
純粋なサイドバックを招集しなかった理由としては、冨安健洋の故障や安藤智哉などの離脱が挙げられる。だが、それだけでは説明がつかない。森保監督が約2年半にわたり3バックを頑なに採用してきたことにより、日本代表においてサイドバックは事実上「存在しないポジション」になっていた。この歪みが、今回の即席4バックの脆さとして、試合の随所に露呈したのだ。
右サイドの真空地帯
この試合で右サイドバックとして先発したのは、サンフレッチェ広島の中野就斗だった。広島は3バックが定番のチームであり、中野は本来センターバック兼ウイングバックとしてプレーしている選手である。しかも、ベネズエラ戦で初キャップを得たばかりの新米である。なぜ、決勝戦に匹敵する重要な第4戦で、この若手を1軍級で固めたチームに任せたのか。
森保監督の頭の中では、右サイドバックの候補が中野以外にいなかったという事実が、この矛盾を浮き彫りにしている。3バックを続けた間、日本代表に本物のサイドバックは存在しなかった。結果として、森保監督はサイドバックのスペシャリストを切り捨ててきたのである。
左サイドバックの鈴木淳之介も、ディフェンスならどこでもできる多機能型選手ではあるが、左サイドバックとして先発するのはA代表11戦目にして初めてのことだった。両サイドとも、本来のポジションに精通した選手が不在という状況は、チームの構造的な欠陥を如実に示している。

非論理的な攻撃の連鎖
サッカーはサイドバックで決まる。これは、この世界に浸透している常識である。引いた相手にはサイドから崩せ。これもまた、イロハのイとして広く知られたスタンダードだ。しかし、日本の4バックは、この基本的な原則から大きく外れていた。
右サイドでコンビを組む中野と堂安律、そして守備的MFの佐野海舟。本来であれば、この3人で三角形を作り、多彩なコンビネーションを展開すべきだった。しかし、佐野はボール奪取能力こそ高いものの、ショートパスに絡む能力は低い。結果として、右サイドは堂安と久保建英という左利きのふたりが、ちょこまかと動き回りながら、感覚的に絡むだけの状態に陥った。
この感覚的なサッカーは、ニュージーランドの大型DFが慣れるまでの間は有効な手段だった。しかし、その感覚を共有できる人数は限られており、三角形は生まれにくい。1トップを張る上田綺世までパスが届かない。日本は半分混乱しながら攻めている感じだった。

前時代的なクロスの代償
左サイドの鈴木と前田大然のコンビネーションは、そもそも期待しにくいものだった。前田は強者相手のプレッシング要員としては文句なしだが、ショートパスで崩す遅攻には向いていない。下支え役の鈴木もプレーの選択肢は少ない。
鈴木は2度、そして中野も1度、現代サッカーにおいてはあり得ない前時代的なクロスボールを送り込んでいる。世界のトップチームは絶対にやらないタイミングで、自らの責任を放棄するようなボヨヨンとしたクロスを、だ。「ワールドカップ優勝」を口にする森保監督だが、こうしたプレーを発生させる限り、ワールドカップの決勝トーナメントでは1勝さえもできないだろう。
ニュージーランドのダレン・ベイズリー監督は、日本の攻撃が混乱していたと率直にコメントしている。日本のボール支配率は69%を記録したが、その割に、深い攻撃の象徴であるマイナスの折り返しは少なかった。交代で入った中村敬斗が幾度かライン際から折り返し、堂安の決勝ゴールはその産物だった。しかし、個人任せ、勢い任せではなく、チームとして意図的にそこを突く姿勢がないと、強豪には立ち向かえない。

電通の統合戦略とJリーグの未来
2026年10月6日、電通がJリーグの「統合型パートナー」に就任した。2026年7月から2030年6月までの4年間のマーケティング契約を締結し、リーグ全体のマーケティング戦略とプロモーション施策の企画・実施、パートナーシップメニューの開発・販売などを担う。
これにより、電通は日本サッカーの「代表」と「男女プロリーグ」をほぼ一社で担う構図が完成した。FIFAワールドカップ2026の国内放送権、WEリーグに続き、今回Jリーグのマーケティングも担う。さらにわずか5日前には、日本バスケットボール協会(JBA)のグロース・パートナー就任も発表している。
「グロース・パートナー」という肩書きで、競技の枠を越えて団体を束ねていく戦略がうかがえる。従来のスポンサー獲得業務では、獲得した協賛金の一定割合を手数料とする成功報酬型の契約が一般的だった。しかし、今回の電通は「枠を売る営業代行」にとどまりません。パートナーメニューの設計からクラブとの価値共創まで担う、いわばリーグの「外部マーケティング本部」に近い立ち位置になる。
海外に目を向けると、ファン拡大の鍵は「映像の開放」だ。NBAは一部のチームにクリップを自前で編集・投稿する許可を与えた。プレミアリーグも米国向けTikTokでクリエイターと組み、若く多様なファンの入口をつくっている。Jリーグが学ぶべきなのは、ハイライトや切り抜きをクラブやクリエイターが使いやすくする仕組みづくりだ。
残された9試合の行方
森保監督の口ぶりからは、残された最大9試合を4バックメインで戦っていくものと推測される。だとすれば、サイドバックを何人か加える必要がある。一度切った人材を再登用するのか、新しく見つけ出すのか。
今回のメンバーのまま4バックサッカーに移行することは、構造的な欠陥を放置することになる。サイドに中盤があるサッカー。いかに論理的に外から崩していくか。出たとこ勝負の感覚的サッカーでは、相手が日本選手の巧緻性に目が慣れると、攻めあぐねるのは目に見えている。
Jリーグの秋春制移行、電通の統合戦略、そして日本代表の構造的な課題。これらはすべて、日本サッカーが次のステップに進むための重要な要素である。しかし、それらを支えるのは、最終的には選手と監督の力である。残された9試合で、日本代表がどのような進化を見せるのか。それは、アジアカップ、そしてワールドカップに向けた最大の試練となるだろう。
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