30周年を機に開発された『METAL SLUG ULTIMATE COLLECTION』。知られざる初代ロケテスト版の発見経緯と、エムツーとの協力関係から生まれた企画の真髄を、開発陣の声を通じて深掘りする。
社内の空気は一変した。SNKレトロ部門のメンバーがデータアーカイブを漁っていた際、誰も手にしたことのない初代『メタルスラッグ』のロケテスト版が姿を現した瞬間だ。30年間、暗闇の底に沈んでいたこのバージョンをプレイした人間はほとんど存在しない。現場では「本当にあったのか」という疑念と興奮が入り混じり、誰もが声を上げ、その発見は単なる新情報ではなく、シリーズの歴史を再定義するイベントとして記憶に刻まれた。
この衝撃的な発掘は、2026年に迎える30周年記念作品『METAL SLUG ULTIMATE COLLECTION』の企画を強力に後押しする材料となった。Nintendo Directで発表された本作には、ナンバリングタイトルの全作に加え、現行機で触れる機会が極めて少なかった『メタルスラッグ アドバンス』、そして今回の主役であるロケテスト版までが網羅されている。30年分の歴史が、この一台に凝縮された形だ。
企画の起点は「何かやりたいね」から
向手史朗氏によれば、企画の出発点は30周年という節目そのものではなかった。実は向手氏の上司と、移植開発で名を馳せるエムツーの担当者たちが、「何か一緒にやることはないか」という漠然とした相談を繰り返していたのである。その延長線上で初めて「コレクション作品」という具体的な形が浮かび上がったのだ。
パートナーが決まり、それから内容を固めるという流れは、多くのゲームプロジェクトとは逆の順序だ。エムツーが『グラディウス オリジンズ』や『Castlevania Dominus Collection』で培ってきた古典作品の再現力と、SNKのブランド力が一致したことで、30周年というタイミングが「これはいける」という確信に変わった。
企画が立ち上がったのは、周年間近という追い詰められた状態ではなかった。両社が長年温めてきた信頼関係が土台にある。この強固な絆なしには、単なる周年企画では終わらない「集大成」は生まれなかっただろう。

収録タイトルの選定基準と『メタスラ7』の優先
収録タイトルの選定には、まずシリーズの主流であるナンバリング作品をすべて入れるという鉄則があった。その上で、まだ現行ハードに移植されていなかった『メタルスラッグ アドバンス』も、今の世代のプレイヤーに体験してもらいたいという思いから採用された。
一方で、『メタルスラッグ ダブルエックス』が収録されないという声は挙がっている。向手氏は、本作では『メタルスラッグ7』の収録を絶対条件としていたことを明かす。ダブルエックスは7の一種のリメイク的な位置づけであり、まずはオリジナルの7を優先した結果、今回は事情があってダブルエックスを割愛せざるを得なかった。
ただし、ファンからの声は十分に届いていると向手氏は述べ、引き続き検討を重ねていく姿勢を示した。30周年の「集大成」という言葉の裏側には、こうして一つ一つ判断を積み重ねてきた開発陣の意思決定の歴史がある。

幻のロケテ版が見つかった瞬間
アシスタントプロデューサーの喜田紗也佳氏は、ロケテスト版が見つかった当時の様子について、レトロチームのメンバーたちが「すごく大騒ぎしていた」と振り返る。当時喜田氏は別の部署に所属しており、横からその盛り上がりを見ていたという。
「レトロの人たちがすごく喜んでるな」と思ったその瞬間に、このバージョンがいかに希少で価値のあるものかが伝わってきた。現在は自ら携わる立場となり、「こんなにすごいものだったんだ」と改めて実感しているという。
30年前にアーケードでロケテストとして回っていたバージョンを、現代のハードでプレイできることは、ファンにとって単なる復刻以上の体験である。開発陣自身も、その希少価値を肌で感じながら収録作業を進めてきたことが、インタビューの端々から伝わってくる。

現代向けの機能と30周年以降の展望
本作には、クイックセーブや巻き戻し、オンライン協力プレイ、スコアアタックなど、現代のプレイヤーが期待する機能が多数用意されている。30年前のアーケード体験をそのまま再現するだけでなく、今の遊び方に合わせて操作感や利便性を高めている点が、単なるリマスターとの決定的な違いである。
ブランドマネージャーの宋昇柱氏も、エムツーとの開発体制や30周年以降のシリーズ展望について言及している。30周年は一つの到達点であり、同時に次の展開の出発点でもある。ファンが求める「あの頃の感覚」と、今の技術で可能にする「新しい体験」の両立が、このコレクションが果たす役割の核心だ。
SNKとエムツーが手を組んだ『METAL SLUG ULTIMATE COLLECTION』は、30年の歴史を振り返るだけでなく、シリーズの未来をどう描いていくかを示す試金石でもある。幻のロケテスト版がその象徴として収録されたことは、まさに「過去と未来をつなぐ」この作品の姿勢を体現している。
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