鮮やかな緑と深い味わいで世界を魅了する抹茶が、いま空前の品薄となっている。その背景にある爆発的な人気と、追いつかない生産の事情、そして賢い付き合い方について読み解く。
鮮やかな緑色と、ほのかな苦みのなかに広がる深いうまみ。日本を代表する飲み物のひとつである抹茶が、いま世界中で驚くほどの人気を集めている。ところがその一方で、これほど身近だったはずの抹茶が、近ごろ思うように手に入りにくくなってきているという話を、耳にした方も少なくないだろう。
実は今、抹茶はかつてないほどの品薄の状態にあるといわれている。長い歴史を持つ日本のお茶の商いのなかでも、これほどの不足はほとんど例がないほどだという。今回は、この抹茶をめぐって今なにが起きているのか、その背景にある事情と、これからの賢い付き合い方について、やさしくひもといていきたい。
世界を席巻する抹茶の人気
まず品薄の大きな要因となっているのが、海外での爆発的な人気の高まりである。とりわけ若い世代のあいだで、おしゃれな飲み物として広く受け入れられ、街のカフェでも抹茶を使った飲み物が定番のメニューとして並ぶようになった。その鮮やかな緑の色合いが、写真映えする点も人気を後押ししている。
写真や動画を通じて、その魅力が瞬く間に世界中へと広まっていったことも大きい。健康によいという評判も相まって、これまで日本茶になじみの薄かった国々でも、抹茶を求める人が急激に増えている。こうして世界的に膨れ上がった需要が、日本の生産の力を大きく上回ってしまっているのである。
追いつかない生産の事情

では、なぜ生産が需要に追いつかないのだろうか。抹茶のもとになるのは、日光をさえぎって大切に育てられた特別な茶葉であり、これを育てるには手間ひまがかかる。そのうえ、茶の木は植えてから十分に収穫できるようになるまで、数年という長い年月を要するため、急に量を増やすことができないのだ。
さらに深刻なのが、お茶を育てる農家そのものが減り続けているという事情である。この二十年ほどの間に、実に多くの生産者が高齢などを理由にお茶づくりから離れ、残った担い手も年々歳を重ねている。急な需要の高まりに、すぐには応えられない構造的な難しさが、そこには横たわっているのである。
煎茶にまで及ぶ波紋
抹茶をめぐるこの騒動は、実は抹茶だけの問題にとどまっていない。抹茶のもとになる茶葉のほうがより高く売れるようになったため、これまで私たちがふだん飲んできた煎茶の畑を、抹茶用へと切りかえる生産者が増えているのだ。その結果、身近な煎茶までもが値上がりの波にさらされている。
こうした流れを受けて、抹茶の値段そのものも大きく上昇している。ある調べによれば、その価格は一年のうちに数割も跳ね上がったとされ、原料となる茶葉の取引価格にいたっては、前の年のおよそ二倍にまで達したという。私たちの暮らしにも、じわりとその影響が及びはじめている。
賢く付き合うために
こうした状況のなかで、消費者として気をつけたい点もある。品薄と値上がりに乗じて、質のあまり高くない粉末が、あたかも上等な抹茶であるかのように売られてしまう例も出てきているという。手に入れる際には、信頼のおける売り手を選ぶという、ふだん以上の慎重さが求められそうである。
とはいえ、抹茶が私たちの前から完全に消えてしまうわけではない。値段は上がり、時には買える量に制限がかかることもあるかもしれないが、その一杯の価値をあらためて噛みしめるよい機会ともいえる。世界に誇るこの緑の恵みと、これからも大切に付き合っていきたいものである。

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