アゴダの最新データが映し出す、日本人旅行者の「隙間」の使い方。AIに計画を任せても、最後の一押しは必ず自分の手で。タイドラマが変えた地方の風景と、680万円の貸切列車という極端な二極化。2027年の旅は、効率ではなく「納得感」で選ばれる時代へ。
AIは使うが、最終決定は人間がする
アゴダの「2027年 アジアの旅行動向に関する調査」を読むと、日本人の行動パターンに妙なズレがあるのが見える。旅行計画の段階でAIを活用する人の割合は約半数の48%に達し、前年の20%から一気に跳ね上がった。情報収集や旅程の組み立てにおいて、AIはもはや特別なツールではなく、当たり前のように手元に置かれる存在になっている。
だが、ここで話が変わる。「AIエージェントにホテルの予約を任せたいか」という問いに対し、74%が「自分で予約したい」と答えたのだ。この割合はインドネシアと並び、調査対象の11市場で最も高い。利便性を認めているのに、実際の決済や最終判断は自分で行いたい。この慎重さ、あるいは主体性は、日本人特有の「納得の買い方」を反映している。テクノロジーはあくまで補助輪であり、ハンドルを握るのは自分自身でいたいという意識が、データから透けて見える。
限られた時間で、確かな価値を選ぶ
2027年に向けた傾向は、単に旅行に行く回数や距離を伸ばすことではない。限られた時間と予算の中で、自分にとって本当に価値のある体験を、より意図的に選び出そうとする動きだ。アジア全体で海外旅行への関心が高まる中、日本人旅行者の65%が2027年は「主に国内を旅行する」と回答。これは調査対象の11市場で最も高い数値だ。
期間を見れば、「1~3日間」が55%と圧倒的に多い。これも11市場中トップの割合だ。次いで「4~7日間」が30%。長期休暇を取りにくい現代のスケジュール感の中で、週末や短い休暇で済ませられる旅行への志向が強い。行き先のアクセスの良さや利便性はもちろん、日常の生活リズムに無理なく組み込めること、それが選ばれる条件の中心にある。
聖地巡礼が変えたタイの風景
タイ国政府観光庁の桑木友子氏の話によると、タイドラマのブームが日本人のタイ旅行を根底から変えたとのこと。2020年の春、外出制限が続く中で「2gether」がSNS上で爆発的に広まった。明るく親しみやすい物語が、閉塞感漂う日々の中で多くの人の心を掴み、タイドラマ人気に火がついたのだ。
渡航再開後、現場の風景は変わった。ドラマや俳優を強く支持するファンが、明確な目的を持ってタイを訪れるようになった。「あの作品のあの場所を見たい」「推しがいる国へ行きたい」という動機が、渡航を後押しした。ブームがタイ旅行全体の急回復に直結したわけではないが、強い動機を持つファンが最初に国境を越え、現地での体験をSNSで発信したことで、後に続く旅行者の心理的なハードルも下がっていったようだ。

地方都市へ人を動かす力
聖地巡礼がもたらした変化の一つが、訪問先の多様化だ。従来のタイ旅行では、寺院や王宮、マーケット、ビーチリゾートなどが主要な目的地だった。だが、タイドラマのファンは、大学やレストラン、カフェ、主人公が暮らしていたアパートなど、一般的な観光案内には載りにくい場所も目指す。
地方へ人を動かした代表例が、「I Told Sunset About You」である。プーケット・タウンの街並みや飲食店、ビーチ、美しいサンセットを眺められる名所などが物語を彩り、撮影から年月がたっても、作品の写真や装飾を残してファンを迎える店もあるという。アクセスが容易ではない場所でも、「作品に登場した風景を自分の目で見たい」という思いが、旅の動機になっている。
推し活旅行とイベント志向
アゴダの調査では、「グルメ体験」(52%)が最も多く、次いで「文化体験」(44%)となった。観光名所を巡るだけでなく、現地ならではの食や文化を楽しむことが、旅行先を選ぶ重要な動機になっている。
特に注目すべきは、「コンサート、フェスティバル、スポーツイベントなどへの参加」を目的に旅行を計画する人が33%に上り、調査対象の11市場で最も高い割合となった点だ。自分の好きなアーティストやスポーツ、趣味などをきっかけに旅先を選ぶ、目的型旅行への関心の高さがうかがえる。タイでは、ロケ地巡りと並ぶ渡航目的として、俳優のイベントを詰め込む「推し活旅行」も生まれている。

680万円の貸切列車という極端な選択
高級旅行会社アバクロンビー&ケント(A&K)が、2027年も「ななつ星in九州」をまるごと貸し切るツアーを実施すると発表した。2026年10月に英国の旅行ニュースサイト「Breaking Travel News」が伝えたとおり、A&Kがななつ星を貸し切るのは、今回で2年目となる。
ツアー名は「Japan by Luxury Train: Seven Stars in Kyushu 2027」で、日数は10日間(福岡スタート・京都ゴール)、出発日は2027年4月4日(桜の季節)と9月12日。定員は4月は最大18人、9月は最大20人、料金は1人4万2995米ドル〜(約680万円〜)だ。参加条件は12歳以上で、日本までの国際線航空券は含まれない。
ななつ星は、ふつうは申し込んでも抽選で、何年も応募し続けてやっと乗れる人もいるほどの人気列車だ。A&Kは列車ごとチャーターして、ツアーの参加者が必ず乗れるようにしている。もし時給1,200円のアルバイトで貯めるとしたら、1日8時間、毎日休まず働いても約2年かかっちゃう計算だ。しかもこれ、日本までの飛行機代は別。抽選なしで必ず乗れて、ホテルも旅館も食事もほぼ込みの10日間とはいえ、正直、庶民感覚ではちょっとわからない世界かもしれない。「一生に一度のご褒美旅」を本気で選べる人って、どんな人たちなんだろう?って想像しちゃいますよね。
穴場選びにおける安全性の重視
宿泊予算について、日本人旅行者の52%が1泊あたり「51~100米ドル」を予定しており、「50米ドル以下」(22%)と合わせると、74%が1泊100米ドル以下を想定している。
あまり知られていない「穴場」の旅行先を選ぶ際に重視する要素としては、「安全性・治安の良さ」(33%)が最も多く、次いで「旅行費用の安さ」(31%)となった。特に、安全性を重視する日本人旅行者の割合は調査対象の11市場で最も高く、穴場の旅行先を選ぶ際には、費用の安さよりも安全性が重視されていることが明らかになった。

2027年の旅の在り方
今回の調査から、日本人旅行者は限られた時間や予算の中でも、自分の興味や価値観に合った旅行体験を大切にしていることが分かった。特に、国内旅行や短期旅行への根強い人気に加え、グルメや文化、イベントなど、明確な目的を持って旅を楽しもうとする姿勢が印象的だ。
また、旅行計画にAIを活用する人が大きく増加する一方で、ホテルの予約は自分で行いたいという回答が多数を占めたことも興味深い結果だ。テクノロジーによる利便性を取り入れながらも、最終的には自分自身で納得して選択したいという、日本人旅行者の意識が表れている。
アゴダでは、日本市場のニーズに応え、旅行者が安心して、そして主体的に旅行を楽しめるようサポートしていく。2027年の旅は、AIと人間の協働、そして明確な目的意識によって、より豊かになるのかもしれない。
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