現役時代から変わらない石毛宏典氏の食習慣と、8年ぶりの人間ドック結果。沖縄での新事業と向き合う70歳の現在地。
取材の約束が午後2時だった。その直前まで別の仕事で動き回っていた石毛宏典氏が、腹を満たした場所はどこだったか。意外にも、有名チェーン店だった。現役時代は遠征で日本中を回り、数多くの食を経験してきたはずなのに、その口から出たのは「うまい、まずいはよく分かりますよ。でも食のこだわりは何一つないんです」という言葉だった。
今年で70歳を迎えるこの男性は、1980年代から90年代にかけて西武ライオンズを牽引したレジェンドだ。引退後は日本初の独立リーグである四国アイランドリーグの創設に関わり、現在は沖縄でスポーツアカデミーの設立に取り組んでいる。忙しい日々を送る中で、なぜ彼はここまで健康に対して無頓着でいられるのか。その理由と、最近受けた8年ぶりの人間ドックの結果について、彼が率直に語った。
「てんや」や「すき家」が日常
石毛氏は、健康に対する意識が意外なほど低いと打ち明ける。現役時代は広岡達朗監督の指導により、アルカリ性の体を保つことを意識した時期もあった。しかし、それは長くは続かなかったという。「一過性で終わりました。球団にいる時はそういった体を保つための料理が出てくるので食べていましたけどね」と彼は振り返る。
現在も「晩酌で、ほぼ毎日お酒を飲んでいます。ビールと日本酒をちょっと飲むくらいなものですが」と語る。特別な食材を避けたり、厳しい食事制限をしたりする様子はない。むしろ、チェーン店の「てんや」や「すき家」が日常の食事の一部として自然に組み込まれている。この軽やかな食生活が、彼の長寿を支える要因の一つになっているのかもしれない。

8年ぶりのドックと沖縄への覚悟
そんな石毛氏が、久しぶりに自身の身体と向き合うきっかけになったのは、人生をかけた新たな取り組みだ。沖縄でスポーツアカデミーを設立するため、近年は東京と沖縄を往復する日々を送っている。「今後、沖縄での活動が本格化していった場合、何よりも健康な身体でいることが大事じゃないですか」と彼は言う。
しかし、8年くらい人間ドックを受けていなかったという事実がある。妻からは「脳ドックに行かない?」と言われたりもしていた。いい機会だからと一通り受けた結果、どこも問題なかったとのこと。沖縄へ行けば接待や付き合いでお酒を飲む機会も増えるため、特に健康に気を使っているわけではないが、内臓疾患などもなくて元気だという。
目の衰えは感じているが、気になるのはそれくらいだと彼は笑う。丈夫な身体に生んでくれた親と、野菜が中心の料理を作ってくれている妻に感謝しているという。この感謝の気持ちが、彼を健康的に保っている原動力になっているのかもしれない。

「無こだわり」が生む自由
多くのアスリートが引退後に厳しい健康管理に苦しむ中で、石毛氏の「こだわりゼロ」はむしろ強みになっている。特定の食材に固執せず、その時々の体調や環境に合わせて食事を選ぶ柔軟性。それは、70歳になっても精力的に動き続けるための、最もシンプルな戦略と言えるだろう。
彼は「食のこだわりは何一つない」と繰り返すが、それは怠慢ではなく、長年の経験から得た知恵だ。何が自分に合っているか、何を避けるべきかを、自分の身体が自然に知っている。だからこそ、過度な制限に縛られず、自由に生きられる。この姿勢は、私たち一般人にも大きな示唆を与えてくれる。

次のステージへ
沖縄でのスポーツアカデミー設立は、石毛氏にとって新たな挑戦だ。東京と沖縄を往復する忙しい日々の中で、彼は「健康な身体でいること」を何より大切にしている。それは、単に長寿を目指すためではなく、次の世代を育てるためだ。
8年ぶりのドックで異常が見つからなかったことは、彼にとって大きな安心材料だろう。これからもビールと日本酒をちびちび飲みながら、チェーン店の食事を平らげ、沖縄の地で新たな仕事を続けていく。その軽やかな姿勢は、70歳という年齢を軽く超えていけそうな、確かな力強さを持っている。
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