富士山を「下る」1泊2日ツアー
2026年10月6日、大阪市を拠点に旅行商品を展開するビーウェーブ東京営業所から、従来の山岳ツアーとは一線を画するユニークな商品が正式に発売された。「秋の富士山下山ツアー|紅葉の御中道・吉田口信仰の道トレッキング2日間」と名付けられたこの企画は、頂上までの往復ではなく、五合目付近から麓の神社までを歩く「下山」に特化したものである。開催日は10月24日と25日、そして31日と11月1日の2日間のみで、旅行代金は6万3,600円から8万8,200円まで設定されている。JR三島駅での集合に加え、東京・名古屋・新大阪からの交通機関を利用するプランも用意されており、全国からアクセスしやすい体制が整えられている。
この商品企画の背景には、同社社長の「山登りではなく、山下りの方が楽であるはずだ」という独創的なひと言があった。社長自身が富士山の登頂を経験した際に感じた「登りの困難さ」を克服し、体力に自信がない層でも富士山を歩ける機会を提供できないかと発想したことが起点である。かつて富士講の参拝者が歩いた吉田口登山道を逆方向にたどるというアイデアが形となり、現在の商品化に至った。
登らない富士山の楽しみ方
一般的な富士山ツアーは五合目から山頂までの往復、あるいは山頂から降りてくる行程が主流だが、本ツアーは山頂を目指さず中腹から麓へ歩くことを主眼に置いている。初日は貸し切りバスで四合目付近の奥庭自然公園まで移動し、そこから行程を開始する。溶岩地形やカラマツの黄葉が織りなす美しい御中道を歩き、夜は五合目の山小屋「佐藤小屋」に宿泊する。この構成により、頂上を目指すための急峻な登坂を避け、快適なペースで富士山の自然を満喫できる。
翌朝は天候が良ければご来光を望むことができ、山頂に到着しなくても「富士山で朝を迎える」という特別な体験が味わえる。企画担当者は「山頂まで行かなくても、富士山は深く楽しめる。秋の自然と歴史をじっくり感じてほしい」と語る。登頂という目標を捨てることで、むしろ富士山の自然や歴史に焦点を当てた、より深い体験が可能になるという。

信仰の道を逆走する
2日目は吉田口登山道を下り、馬返し、中ノ茶屋を経て北口本宮富士浅間神社へ向かう。富士山信仰の歴史を体感しながら約1,100mを歩く本格的な下山ルートであり、達成感も十分に得られる。ガイドには富士山登頂500回以上の実績を持つ榎戸雄一氏が同行し、初心者でも安心して参加できる体制が整えられている。
かつて富士講の参拝者が歩いた道を逆方向にたどるという発想は、単なる体力面の楽さだけでなく、富士山信仰の歴史を体感する新しい形でもある。山頂で拍手を送るのではなく、麓の神社で手を合わせる。この逆転の発想こそが、このツアーの本質的な魅力なのだ。

秋の自然を五感で
10月下旬から11月上旬という開催時期は、まさに富士山の紅葉が最も美しい季節だ。四合目付近の奥庭自然公園からスタートし、溶岩地形やカラマツの黄葉が美しい御中道を歩く。五合目の山小屋「佐藤小屋」で一夜を過ごし、翌朝は天候が良ければご来光を望むことができるという。
登頂には届かないが、秋の自然と歴史をじっくり感じられる。カラマツの黄葉、溶岩地形の質感、山小屋からの眺め。五感で感じ取れる富士山の魅力が、登頂という目標を捨てたからこそ、より鮮明に映えてくるのだ。

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