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飛鳥・藤原の世界遺産登録 土から読む国家の誕生と、父母が支えた50年 CULTURE · JP

飛鳥・藤原の世界遺産登録 土から読む国家の誕生と、父母が支えた50年

鈴木 翔太 鈴木 翔太 shotasuzuki.avalw.com · 288 reads Respect0 Save Share Read only
READS2live count PUBLISHED4 Nov2026 READING TIME1 min14 words LANGUAGEJapanese
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飛鳥・藤原の宮都の世界遺産登録を機に、考古学が描く古代国家形成の急激さと、関西大学の父母会が50年にわたり支えてきた高松塚古墳研究の裏側を詳述する。

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奈良県橿原市大久保町、県社会福祉総合センターのホール。11月3日の午後、約550人の聴衆が埋め尽くす空間に、古代の息吹が漂っていた。奈良文化財研究所と県立橿原考古学研究所が合同で開いた公開講演会「ここから日本の都城がはじまった」は、「飛鳥・藤原の宮都」の世界文化遺産登録を記念する場であると同時に、発掘調査によって白日のもとに晒された事実が、我々の歴史認識をどう揺さぶるかを問う場でもあった。祝典の華やかさとは一線を画し、土の中から掘り出された証拠が持つ重みを、聴衆は静かに受け止めていた。

講演会の核心は、飛鳥時代の急速な文明開化と、初代国家としての体裁の確立にある。橿考研の青柳正規所長は、「世界的に見ても画期的なスピードで、その後の日本の発展基盤を確立した」と断言した。一方、本中真奈文研所長は「発掘調査で明かされた事実は、大地の叫びに耳を傾けた結果だ」と語り、古代の土地が今もなお語りかける声を聞き取る姿勢の重要性を示唆した。この二つの発言は、考古学が単なる過去の記録の積み重ねではなく、現在進行形で歴史を発見し続ける営みであることを如実に示している。

高松塚古墳と父母の会の支援

関西大学創立140周年を契機に、もう一つの考古学的な物語が水面に浮かび上がる。奈良県明日香村の高松塚古墳は、今年7月に「飛鳥・藤原の宮都」の構成資産として世界文化遺産に登録された。その歴史は1972年、奈良県立橿原考古学研究所の調査で壁画が発見されたことに始まる。当時所長を務めた故末永雅雄氏の指揮のもと、故網干善教氏らが発掘に当たったが、大規模な調査には巨額の資金という壁が立ちはだかっていた。学生たちは村民の好意で民家に泊まりながら、限られた資源の中で調査を続行したのである。

そんな窮状の中、支援の輪を広げたのが、学生と卒業生の父母らで組織する「関西大学教育後援会」と「千寿会」だった。教育後援会の植田正路・元会長は自ら資金を寄付し、現地への教育・研究施設建設を推進した。こうして設立された関西大学飛鳥文化研究所は、後に「植田記念館」と名を変えた。75年には明日香村と関西大が共催する市民講座「飛鳥史学文学講座」が始まり、千寿会も後援に加わった。この講座は年14回開かれ、2024年に開講50年目を迎えた。

飛鳥時代の土偶(haniwa)の細部。髪型や装飾の丁寧な造形が、当時の信仰と技術を示している
飛鳥時代の土偶(haniwa)の細部。髪型や装飾の丁寧な造形が、当時の信仰と技術を示している

50年続いた市民講座の力

「飛鳥史学文学講座」の歩みは、学術研究が地域社会とどう結びついていくかの好例を示している。講座は年14回開かれ、これまでに600回を重ね、受講者は延べ11万人に上るという。先月の10月3日にも現地講座とバスツアーが実施され、今なお活発な活動が続いている。千寿会の宮田慎一事務局長は、「会員の方々は、ご近所や職場のつながりとはまた少し違う仲間を大切にしながら、何歳になっても視野を広げようと学んでおられる」と語る。この言葉は、学問が個人の人生をどう豊かにするのかを端的に表している。

千寿会は1955年に設立され、現在の会員は約400人。「我が子の母校は我が母校」を合言葉に、観月会や京都散策、周遊旅行など年4回の行事を開いている。後に関西大理事長を務めた森本靖一郎氏が「子どもは卒業させても親は卒業させない」と呼びかけて設立したこの会は、生涯教育の場づくりを続けてきた。理事長や学長も参加して親睦を深めるこうした取り組みが、大学を後方支援する強力な基盤となっているのである。

飛鳥・藤原の宮都の構成資産である古墳の上空からの眺め。発掘調査が進行中の様子
飛鳥・藤原の宮都の構成資産である古墳の上空からの眺め。発掘調査が進行中の様子

飛鳥宮跡の発掘が示す国家の胎動

講演会で橿考研の鈴木一議・指導研究員が紹介した飛鳥宮跡の発掘成果は、飛鳥時代の国家形成を具体的に浮かび上がらせている。飛鳥宮跡には3時期の宮殿跡が重複しており、1期は舒明天皇の飛鳥岡本宮、2期は皇極天皇の飛鳥板蓋宮、3期の前半は斉明天皇の後飛鳥岡本宮、後半は天武・持統天皇の飛鳥浄御原宮だと解説された。この連続的な宮殿の建設と変遷は、飛鳥期に国家の体裁が急速に構築されていった過程を物語る。

奈文研の若杉智宏・主任研究員は、「発掘からみる飛鳥の寺院と古墳」と題し、構成資産19件のうち6件を説明した。飛鳥寺跡については、「塔心礎から数多くの埋納物が見つかり、古墳時代と飛鳥時代の過渡期を示した。近年の再整理によって再評価が進んでいる」と述べ、発掘調査の継続的な重要性を強調した。これらの発見は、飛鳥時代が単なる古代の時代ではなく、日本の国家構造が生まれる転換期であったことを示している。

千寿会の会員たちが交流する場面。生涯教育の場としての大学の役割
千寿会の会員たちが交流する場面。生涯教育の場としての大学の役割

発掘調査の最前線と学術的意義

橿考研の黒沢ひかり・主任技師と奈文研の岩永玲・研究員は、それぞれ「飛鳥宮跡における発掘調査の最前線」と「藤原宮跡における近年の調査成果と意義」を報告した。これらの最新の調査成果は、飛鳥・藤原地域の歴史的魅力を多角的に捉えることを可能にしている。考古学は単なる過去の遺物の発見ではなく、土地そのものが語る歴史を読み解く営みである。青柳所長の「地の叫びに耳を傾けた」という言葉は、この営みの本質を捉えている。

発掘調査によって明らかになった事実は、東アジア世界の文脈のなかで、日本の始まりについてしっかりと考え直すきっかけを与えてくれる。本中所長のこの言葉は、考古学的発見が持つ国際的な意義を示している。飛鳥・藤原の宮都は、日本のみならず東アジアの歴史を再評価する重要な資料群であり、その価値は世界遺産登録によってさらに高まっているのである。

学の実化と現代への応用

関西大学では、研究を社会に反映させるための取り組みも進められている。2016年設立の「関西大学イノベーション創生センター」は、生み出された技術や知財をもとに起業し、事業化することで再現性や生産性を高めることを目指している。センター長の石川正司・化学生命工学部教授が開発したイオン液体電池は80度の高温環境でも作動し、17年にJAXAに採用されて翌年に打ち上げられた。「世界最小の軌道ロケット」としてギネス世界記録に認定されたこの技術は、建学の理念「学の実化」を体現するものである。

人文系の研究を生かした起業も存在する。文学部で哲学を専門とする三村尚彦教授は、人間の身体や心理、体験に関する学際的な研究成果を、企業の商品・サービス開発に応用している。「哲学や人文学はお金にならない」という見方を変えたいと考える三村教授は、「人文学で物事の原理や本質を問い直す姿勢は、これからの社会に必要だ」と語る。考古学や歴史学もまた、現代の課題を解決するための知恵を提供する可能性がある。

未来への接続

飛鳥・藤原の世界遺産登録と、それに伴う考古学的研究は、過去と現在を繋ぐ架け橋となっている。高松塚古墳の発掘から50年以上が経過し、その成果は世界遺産という形で結実した。しかし、研究はそこで終わるものではない。関西大学の父母の会や千寿会の支援、市民講座の継続、そしてイノベーション創生センターの取り組みは、学問が社会の中でどう生かされていくかを示している。

青柳所長の本中所長との対談は、飛鳥時代の急激な文明開化が「その後の日本の発展を保証した」と述べた。この保証は、単なる歴史的評価ではなく、現代の学術研究と社会実装への期待を込めた言葉である。発掘調査が解き明かす飛鳥・藤原の宮都の物語は、まだ書きかけのページである。未来の考古学者たちが、さらに深い層から新たな発見を引き出していくことを、私たちは期待している。

よくある質問

高松塚古墳の壁画はいつ誰によって発見されたのか

1972年に奈良県立橿原考古学研究所の調査により、故末永雅雄所長の指揮のもとで発見されました。当時、発掘作業には故網干善教氏らが参加し、限られた資源の中で調査を続行しました。

飛鳥史学文学講座はどのようにして始まったのか

1975年に明日香村と関西大学が共催する形で開始されました。この講座は、関西大学教育後援会と千寿会による支援のもと、学生と卒業生の父母らが組織した支援の輪が広まったことから生まれました。

飛鳥宮跡にはどの時代の宮殿が重なって存在しているか

飛鳥宮跡には3時期の宮殿跡が重複しています。1期は舒明天皇の飛鳥岡本宮、2期は皇極天皇の飛鳥板蓋宮、3期は斉明天皇の後飛鳥岡本宮と天武・持統天皇の飛鳥浄御原宮にあたります。

千寿会はいつ設立され、現在どのような活動を行っているか

1955年に設立され、現在の会員数は約400人です。観月会や京都散策、周遊旅行などの年4回の行事を開くとともに、関西大学の後方支援を強力に行っています。

関西大学イノベーション創生センターが開発したイオン液体電池の特徴は何か

80度の高温環境でも作動するという特徴があります。この技術は2017年にJAXAに採用され、翌年に打ち上げられた「世界最小の軌道ロケット」に使用されてギネス世界記録に認定されました。

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鈴木 翔太 2026-11-04 · 1 min read · 2 reads
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