ゲームマーケット2026秋に出展できないボードゲームクリエイターが、新作『バードブレインコーラス』の先行販売を決断した理由と、イベントに「乗る」ことの価値を考察する。
どう売るか。いつ発売するか。この二つの問いが頭をよぎった。ゲームマーケットのタイミングに合わせて通販で発売するのか、もっと早く時期に関係なく通販に特化するのか、それとも来年の2027春まで寝かせるのか。大きく分けて3つのパターンが頭に浮かんだ。しかし、どれを選んでも一長一短がある。特に会場に来ていただいていた方々が、私が出ていなければ他のボードゲームを買うという現実が、通販で買っていただけるのかと考えると、ちょっとどうだろうなと感じたのだ。
周りが盛り上がっている「今」に出す
結局、私は「もう一旦販売しよう」と決めた。その理由は単純だ。いまはゲームマーケットのブース番号が出始めて、あちこちでプロモーションがすごい勢いで出てきている。予約受付開始などの情報が飛び交い、ボードゲームへの熱量が高い状態を作っている。だからこそ、この波に乗ることにした。
「ゲームマーケットで何を買おうかな」と、皆さんがいろいろ見ている最中に、「通販で先行販売しますよ」と言うのが一番効果的ではないかと思った。周りが予約受付している中で、私は先行販売という形で動く。このタイミングで動くことで、ゲームマーケットという大きなイベントの熱気を借りることができる。シーズン的に微妙な時期に単独で出すよりも、明らかに有利なのは明白だ。
この判断は、単なる販売戦略ではない。ボードゲームファンが最も集中している瞬間に、自分の作品を届けたいという強い意志があった。ゲームマーケットという場を物理的には使えなくても、その「空気感」だけは確実に取り込みたい。そう考えた結果、先行販売という形が最も合理的だと判断したのだ。

出展すること自体がプロモーションだった
今回出ないことになって、体感的に大きく違ったことがある。それは、ゲームマーケットに出ること自体がやっぱりプロモーションになるんだなということだ。私は「ゲームマーケット新作」という言い方ができない。出ないので。この一言が、どれだけ多くの機会を失っているかを知っている。
周りではゲームマーケット応援企画がたくさん出ている。よくある自薦・他薦募集系のものや、VTuberのきたこしさんのチャンネルの紹介配信、インフルエンサーさんのブログなど、基本的に「ゲームマーケットの新作を紹介します」という体のものが多い。しかし、私はことごとく参加できない。PVをまとめたサイトも立ち上がったが、そこにも掲載できない。すごくもどかしい。同じDiscordでそのサイトの立ち上がりを見て、面白いと意見していたのに、自分の作品が入らないという寂しさは言葉に表しにくい。
当日物が売れるかどうかとは関係なく、お祭りごとやイベントごとに乗っかれることがすごく強いんだと思う。現場に出ること自体も、来場者へのアピールになって、いいことずくめだ。でもその場で売れるメリットだけでなく、事前のプロモーションや認知、告知がゲームマーケットという大きな波に乗れるかどうかは、やっぱり強いんじゃないか。私はボードゲーム界隈を盛り上げたいので、皆さんの作品を紹介したり、ブースカットコンテストを開催したりと、応援企画はガンガンやってきた。だけど私は出れないんだよな、という感覚は拭えない。人の作品の紹介ばかりで、自分の新作の紹介は全然やっていなかった。それはゲームマーケットに出ないからなのだ。

『バードブレインコーラス』というゲーム
さて、その先行販売する新作『バードブレインコーラス』だが、キャッチコピーは「集めて、忘れて、歌いましょう」。忘れっぽい鳥たちが森で大合唱会を開こうと集まり、合唱団を作るために歌の上手い鳥をスカウトしに行くお話だ。ところが、スカウトに行った鳥は「あれ、何しに来たんだっけ?」と忘れてしまう。この設定が、ゲームの核心になっている。
ゲームとしては、場に並んだカードに対して、皆さんが手札から鳥を出す。数字が大きい鳥から順に、どの鳥をスカウトするかを選んで合唱団に引き入れる。そしてスカウトに向かわせた鳥は、忘れてそのまま場に残る。自分がドラフトに使った鳥が、次のスカウトされる側になるのが特徴だ。これを9ターン繰り返す。合唱団は最大4枚までで、5枚目が入ったら誰かを解雇しないといけない。スカウトしたばかりの鳥をすぐ解雇するのもありだ。
最終的な4枚で、ストレートやフラッシュ、ツーペアのようなポーカー風の役を作って勝負する。役で勝った人から、カードの得点にハーモニーボーナスという倍率が掛かるので、役をしっかり作った方がめちゃめちゃ強い。カードの数字も少し特殊で、ドラフトで使う数字と得点を逆転させている。1はドラフトでは最弱だが得点は高く、9はドラフトでは最強だが得点は低い。この逆転構造が、戦略を大きく変えるポイントになる。

先行販売の本当の意味
先行販売を決めた背景には、単なる売上確保という目的だけではない。ゲームマーケットというイベントの熱気の中で、自分の作品を認知していただきたいという気持ちがある。物理的な出展はできないが、その「空席」を埋める方法は、デジタルな場で作品を届けることだ。通販という形は、場所を選ばず、いつでも買えるという利便性がある。
また、先行販売することで、ゲームマーケット当日に購入できない方々にも、確実に作品を届けることができる。会場では出展者との直接のやり取りが魅力だが、通販ではその代わりとなる情報が重要になる。PVや説明文、レビューなど、デジタルな手段で作品の魅力を伝える必要がある。この準備も、先行販売を決めたことで、より丁寧にやらなければならなくなった。
この経験は、私にとって大きな学びになった。イベントに出ることだけが、作品を届ける方法ではない。むしろ、出られないからこそ、どう届けるかを考えざるを得ない。その発想の変化が、今後の活動にも大きく影響するだろう。先行販売は、単なる販売手段ではなく、作品とファンをつなぐ、新しい形の一つだと思う。
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