2026年11月4日、タカラトミーがインディーゲームパブリッシングブランド「ENJOYN GAMES」を始動。同日に発表された高橋氏の新スタジオ設立の背景と、業界の多様化への期待。
同日に報じられたもう一つの動きが、元テトリスディレクターの高橋氏がSNKの支援を受け新スタジオ「VS Studio」を設立した件だ。50歳を目前にした高橋氏は、残り10年のキャリアをどう使うか自問した末にこの決断を下した。かつては年に1本リリースしていたが、今は1本に5年かかる時代。残り1本しか作れないかもしれないという危機感から、新しい挑戦を選んだのだ。
積み木から生まれたゲームの縁
タカラトミーの新ブランドは、既存の大手パブリッシャーとは異なるアプローチを持っている。第1弾として発表された「人狼バーガー」「Little Cheese Works」「Sloppy Forgeries」の3作品は、いずれもSteam向けに展開されるインディータイトルだ。特に「Sloppy Forgeries」については、タカラトミーが日本国内でのパブリッシングを担当しており、これは同社が単なるスポンサーではなく、実際に市場に作品を届ける主体として関与していることを意味する。
「人狼バーガー」は、仲間と協力してハンバーガーを作りながら、紛れ込んだスパイを見つけ出す正体隠匿系パーティゲームだ。最大6人で楽しめるパーティモードのほか、1人でルールを覚えながら物語を楽しめるストーリーモードも収録されている。発売日は2026年11月10日で、希望小売価格は880円と手頃な価格設定がなされている。この価格帯は、インディーゲームが持つ親しみやすさや、気軽に試せる特性を反映している。
「Little Cheese Works」は、ブラック企業で働くネズミの社員となり、最大4人で協力しながら大きなチーズを運ぶ協力ステルスアクションゲームである。プレイヤーはネコに見つからないよう、仲間と連携してチーズを持ち帰ることが目的だ。協力プレイにはボイスチャットを使用するが、ネコは小さな物音でも目を覚ましてしまうため、ステージごとに用意されたギミックを攻略しながら、慎重にチーズを運ぶ必要がある。オンラインとローカルの協力プレイに対応し、2026年第4四半期に発売予定だ。
「Sloppy Forgeries」は、世界の名画を3分以内にマウスで模写する対戦型お絵かきゲームだ。使用できる色は4〜6色、筆のサイズは3種類に限定されており、元に戻す操作や塗りつぶしも禁止されている。描いた作品はリアルタイムで採点され、最大8人でオンライン対戦を楽しめる。さらに、2つのマウスを使って1台のPCで遊べるローカル対戦モードや、50の名画に挑戦するシングルプレイヤーモードも収録される。発売日は2026年11月14日を予定しており、ENJOYN GAMESが日本国内でのパブリッシングを担当する。

配信者との協業という新しい窓口
「人狼バーガー」の発売を記念して、まじめにヤバシティとにじさんじによる実況配信が決定した。発売前の2026年11月8日と発売日当日の2026年11月10日に、それぞれ6人のメンバーがゲームをプレイする。11月8日の先行配信には、鬱先生、エーミール、シャオロン、ショッピ、ゾム、トントンの6人が出演し、まじめにヤバシティ公式YouTubeチャンネルで実施予定だ。
発売日である11月10日には、VTuberグループ「にじさんじ」のライバー6人による実況配信が行われる。出演者は七瀬すず菜、早乙女ベリー、雲母たまこ、酒寄颯馬、渚トラウト、赤城ウェンで、各ライバーのYouTubeチャンネルで行われる予定だ。このように、インディーゲームのプロモーションが、従来のゲームメディアやイベントから、こうした個人やグループの配信者への協業へと重心を移していることが窺える。

50歳からの再出発
高橋氏は、バンドエナムコを離れる決断は、特定の理由からではなく、新たな道に進むべき時が来たという感覚だったと述べている。50歳を目前に控えた時、ゲーム開発者としてのキャリアの残り10年をどう過ごしたいか、という問いを自分に投げかけた。日本の定年退職年齢が60歳前後であることを考慮し、それまでにテトリスが15作目あたりまで進んでいることを想像していた。
かつては年に1本ゲームをリリースしていたが、今は1本を作るのに5年かかることもある。50歳を迎える頃には、もう1本しか作れないかもしれないと気づき、新しいものを試みたかったのだ。高橋氏は、業界でレイオフや閉鎖が絶えない困難な環境の中、新スタジオを立ち上げることは畏怖すべき環境だと認識している。それでも、独立スタジオの同僚たちが直面している課題について助言を求める声が届く中で、リスクを理解した上でこの決断を下した。
SNKからのオファーは、特に印象的だった。Fatal FuryやThe King of Fighters、そしてNeo Geoで知られる歴史的な日本の開発会社である。サウジアラビアの所有は物議を醸しているが、高橋氏は、同国がEsports World Cupを開催するといったシナジーや、皇太子殿下が熱心なゲームファンであるという点に惹かれた。この経路で接触を受けたことは、典型的な企業への入社とはまったく異なる感覚だったという。

業界の多様化と未来
タカラトミーの新ブランドや高橋氏のスタジオ設立は、ゲーム業界が単一の巨大な構造から、より多様で柔軟な構造へと移り変わっていることを示している。インディーゲームは、もはやニッチな存在ではなく、大手企業にとっても重要な成長分野であり、人材育成や新規事業の源泉になっている。
この変化は、プレイヤーにとっても良いことだ。多様な視点や、従来の大手スタジオでは生まれにくかったような、独特のアイデアや表現が、より自由に市場に届けられるようになる。ゲームというメディアの可能性が、さらに広がっていくことが期待される。
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