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CULTURE · JAPAN

千三百年倒れない五重塔 その秘密は一本の心柱にあった

渡辺 美咲 渡辺 美咲 misakiwatanabe.avalw.com · 181 reads Respect0 Save Share Read only
READS764live count PUBLISHED11 Sept2026 READING TIME1 min14 words LANGUAGEJapanese
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地震の多い日本で、なぜ木造の五重塔は倒れずに立ち続けてきたのか。法隆寺の塔は千三百年以上もその姿を保ち、世界最古級の木造建築とされます。中心を貫く心柱による制振の仕組みから、東京スカイツリーへ受け継がれた古の知恵まで、大工の手仕事を見つめる記者が静かにひもときます。

京都の古い町家がどのように生き延びていくのか、私は毎週、大工さんの手元をそばでのぞかせてもらっています。木を巧みに組み、屋根をていねいに葺いていくその手仕事を見ていると、何百年も立ち続けてきた日本の木造建築の底知れぬ力に、いつも静かに驚かされてしまうのです。

その底知れぬ力の象徴ともいえるのが、各地のお寺に高くそびえ立つ五重塔です。あれほど背の高い木造の塔が、地震のきわめて多いこの国で、なぜ一度も倒れることなく立ち続けてこられたのか。その大きな秘密は、塔の中心を垂直に貫く一本の柱、心柱に隠されていると言われています。

千三百年立ち続ける塔

日本で最も古い五重塔として広く知られているのが、奈良の法隆寺に建つ塔です。遠い飛鳥時代に建てられたと伝えられ、実に千三百年以上もの長きにわたって、その端正な姿を保ち続けてきました。いまも現存する、世界最古級の木造建築のひとつに数えられている、たいへん貴重な塔なのです。

驚くべきことに、五重塔はこれほど背の高い木造建築でありながら、長い長い歴史の中で、地震によって倒壊してしまった例が、ほとんど知られていません。世界でも有数の地震大国であるこの日本で、この事実がいったいどれほどすごいことか、あらためて深く考えさせられます。

幾重にも重なる屋根

瓦を葺いた屋根の一枚一枚にも職人の技が宿ります。三つ巴の軒丸瓦が、幾重にも重なる五重塔の屋根を静かに飾っています。
瓦を葺いた屋根の一枚一枚にも職人の技が宿ります。三つ巴の軒丸瓦が、幾重にも重なる五重塔の屋根を静かに飾っています。

五重塔の構造は、意外に思われるほど単純なものだといわれています。瓦をていねいに葺いた五つの層の屋根が、下から順に積み重ねられ、その中心を、一本の太くて長い心柱がまっすぐに貫いています。ちょうど、五つの屋根を大きな串で串刺しにしたような形を思い浮かべると、より分かりやすいかもしれません。

ここで何よりも重要なのは、この五つの層が、がっちりと固められて一本の建物として結ばれているわけではない、という点です。それぞれの層はあくまで静かに積み重ねられているだけで、地震の際には、各層が少しずつずれるように、ばらばらと独立して自由に揺れ動くことができるのです。

心柱という不思議な柱

そして、塔の心臓部にあたるのが、桧の木でつくられた心柱です。この一本の柱は塔の中心を垂直に貫いていますが、たいへん面白いことに、周囲の各層の屋根とは直接つながっておらず、心柱のまわりは、ぽっかりとした吹き抜けのような空間になっているといいます。

各層の重い屋根を実際に支えているのは、心柱とはまったく別に立てられた十六本の柱であり、心柱そのものは、屋根の重さをほとんど負担してはいません。つまり心柱は、建物を上から支えるための柱というよりも、まったく別の、ある大切な役割を担うために据えられているのです。

揺れを打ち消す仕組み

ひとたび大きな地震が起きると、積み重なった各層は、それぞれが思い思いに、ばらばらと揺れ動きはじめます。もし塔全体が右へ傾こうとすれば、中心の心柱は反対に左へと動いてバランスを取ろうとし、互いの揺れをうまく打ち消し合うように働くのだと考えられています。

さらに揺れが大きく激しくなると、今度は心柱が各層の床組みにぶつかることで、塔全体が大きく傾いて崩れ落ちてしまうのを防ぐともいわれています。計算機もコンピューターもない千三百年もの昔に、これほど巧みな制振の仕組みが編み出されていたことには、ただただ深く感嘆するほかありません。

スカイツリーへ受け継がれた知恵

この心柱による制振は、遠い昔に日本で独自に生み出された技術だとされています。そして驚くべきことに、その古の知恵は、現代の最先端をいく巨大建築にも、かたちを変えてしっかりと受け継がれているのです。その最も代表的な例こそが、東京スカイツリーにほかなりません。

高さ六百メートルを優に超える、あの巨大な電波塔もまた、五重塔の古い工法を参考にした心柱制振の仕組みを取り入れ、大きな地震が来てもけっして倒れないように設計されていると言われています。千三百年もの長い時を超えて、古の匠の知恵が今もなお、確かに生き続けているのです。

大工の手が守るもの

毎週、町家の修繕に通う大工さんの手元を見つめていると、木と木を組み合わせるその一つひとつの細やかな工夫の中に、五重塔にも通じる先人たちの知恵が、確かに息づいているのを感じます。それは、書物だけでは決して学ぶことのできない、まさに生きた技術なのです。

日本の木造建築は、ただ古いというだけで貴重なのではありません。地震という厳しくも避けられない自然と向き合い続けてきた、名もなき先人たちの尽きせぬ工夫と、切なる祈りの結晶なのです。その大切な技を受け継ぐ手がある限り、塔も町家も、これからもきっと静かに立ち続けていくことでしょう。

1 responses
駿 清水6 days ago

木造建築についての良い記事です.

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渡辺 美咲
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渡辺 美咲 2026-09-11 · 1 min read · 764 reads
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