環境省はレッドリストを更新し、トキの絶滅危険度を一段引き下げた。佐渡で約576羽が野生に生息し、タンチョウも回復。保護活動の成果が複数の種で表れている。
かつて日本の空から姿を消しかけた鳥が、着実にその数を取り戻しつつある。環境省は、国の特別天然記念物であるトキの絶滅の危険度を、一段引き下げると発表した。新潟県の佐渡島を中心に長く進められてきた野生復帰の取り組みが、長い年月を経て、大きな実を結びつつあることを示す、たいへん明るい知らせである。
絶滅危惧の区分が一段引き下げ
環境省は2026年3月17日、絶滅のおそれのある野生生物をまとめたレッドリストを更新し、トキの区分を引き下げたと発表した。これまで最も危険度が高いとされる絶滅危惧IA類に分類されていたトキは、今回、それより一段階低い絶滅危惧IB類へと見直されることになった。
これは、トキが絶滅の深刻な危機を少しずつ脱しつつあることを示す、象徴的な変更である。かつて日本産のトキは一度は野生で完全に姿を消したが、人の手による繁殖と放鳥の粘り強い努力によって、再び日本の空を悠々と舞う姿が見られるようになってきている。
佐渡で576羽が生息

今回の見直しの大きな根拠となったのが、野生に生息するトキの数の着実な回復である。環境省によると、2024年12月31日の時点で、新潟県の佐渡市におよそ576羽ものトキが野生で生息していると推定されている。長年にわたる地道な取り組みが、確かな成果へとつながっている。
佐渡島では、飼育下で大切に育てたトキを自然へと返す、野生復帰の取り組みが長く続けられてきた。放鳥されたトキが野外でみずから繁殖を重ね、その数を年々着実に増やしていったことが、今回の危険度の引き下げにつながる、大きな原動力となったのである。
タンチョウも回復
明るい変化は、トキだけにとどまるものではない。同じように数を減らしていたタンチョウ、いわゆる丹頂鶴についても、個体数が回復したことを受けて、今回初めて絶滅のおそれのある種の区分から外されることになった。地道な保護活動の成果が、複数の種ではっきりと表れ始めている。
新たに加わった種も
その一方で、新たに注意が必要となった生き物も存在する。今回の更新では、ニホンイシガメが新たに絶滅のおそれのある種の一覧に加えられた。ある種が危機を脱していく一方で、別の種が新たに危機に直面するという厳しい現実も、あらためて浮き彫りになっている。
日本の種の保存の取り組み
日本では、貴重な野生の動植物を守るために、1992年に種の保存法が制定されている。この法律に基づいて、希少な国内外の生き物が保護の対象として指定され、生息地の保全や取引の規制などを通じて、絶滅を防ぐためのさまざまな取り組みが進められてきた。
トキの野生復帰は、その中でも代表的な成功例のひとつとして広く知られている。最近では、島根県の出雲市でもトキを放す取り組みが行われるなど、佐渡以外の地域へと生息の輪をさらに広げていこうとする、新たな動きも少しずつ進み始めている。
保護活動が示すもの
今回の一連の変更は、粘り強く続けられる保護活動が、確かな成果を生み出すことを、私たちにはっきりと示している。一度は失われかけた種であっても、人の努力と長い時間をかけさえすれば、再び自然の中でその数を取り戻すことができるのだという、希望に満ちた事実である。
その一方で、危険度が引き下げられたからといって、決して保護の手を緩めてよいわけではない。トキやタンチョウがこれからも安定して自然の中で暮らし続けられるよう、大切な生息地の環境を守り、丁寧に見守り続けていくことが、引き続き重要であり続けるといえる。
人と自然が共に生きる
トキの危険度の引き下げは、人と自然が共に生きていく道を探るうえで、大きな希望を与えてくれる出来事である。かつて空から消えかけた鳥が再び悠々と舞う佐渡の風景は、失われた自然を人の手で取り戻すことができるのだという、力強いメッセージを私たちに投げかけている。

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