都市の草むしりに使われた2頭のヤギがSNSで人気に。JR東日本の環境配慮型取り組みとは?
新宿駅のすぐそばにある空き地に、2匹のヤギがやってきた。1歳になるオスの「ナギ」と、2歳のメスの「ポッケ」である。彼らが住むのは、JR四ツ谷駅の近くにある約900平方メートルの空き地だ。本来は雑草が生い茂るだけであったこの場所に、JR東日本が「環境に優しい草刈り方法」としてヤギの放牧を開始したのが10月9日のことだった。
最初は業務用の除草剤や草刈り機を使うのが一般的だったが、今回はあえて動物を使うという選択を取った。その結果、通勤帰りに立ち寄るビジネスマンや、近所の小学生が写真撮影に訪れるほどの人気スポットへと変貌を遂げている。都市の真ん中で生き物を前にすると、なぜか心まで軽くなるような不思議な力が働くのだ。
都市の緑地管理に新しい風
JR東日本は、この取り組みについて「草刈り機や除草剤の使用と比較して、ヤギの放牧は継続的な雑草制御が可能であり、環境への影響も軽減できる」と説明している。特に山手線の内側という東京の中心部でこの試みが実施されるのは初めてだ。自然と都市の境界線が、少しずつ溶け合っていく瞬間を見ているような気分になる。
60歳の会社員である野口タマエさんは、「街の真ん中でヤギが見られるのは本当に嬉しい。エサを元気に食べている姿を見るだけで、自分まで元気をもらえるようだ」とAFPの取材に答えた。また、フィリピン出身の38歳の大学生エドワード・アスィスさんも「とても可愛い。この草を自然な方法で除去しようとする試みは素晴らしい」とコメントしている。

SNSで広がる「癒し」の輪
ヤギたちの姿は、すでにSNS上で大きな話題を呼んでいる。ランチ休憩中に写真を撮りに来るビジネスパーソンや、学校帰りにおやつを食べさせてあげる小学生たちの姿が次々と投稿されるようになった。彼らの存在は、単なる雑草除去の道具ではなく、都市生活に疲れた人々にとっての「癒しの源泉」へと昇華している。
こうした反応を見る限り、ヤギたちはすでに「明星」としての地位を確立していると言えるだろう。彼らの活動期間は12月頃まで予定されているが、生息地内の草が完全に食べ尽くされた時点で終了するとのことだ。この期限が来ると、都市の緑地管理は再び機械の音に支配されるのだろうか。

パリでの前例と日本の挑戦
実は、動物による緑地管理は海外でも試みられている。2016年にはパリで、主要な環状道路の近くに約10頭の羊が設置され、草刈りに活用された。しかし、当時も排気ガスや動物福祉を懸念する市民からの批判が巻き起こった。日本での今回の試みは、そうした課題をどのようにクリアしようとしているのだろうか。
少なくとも現時点では、新宿のビジネス街という活気ある環境において、ヤギたちは穏やかにその役割を全うしている。都市の空気がどれだけ清浄か、あるいは彼らのストレスレベルはどうかなど、詳細なデータは公開されていないが、現地の住民からは肯定的な声が寄せられている。

自然との共存の在り方
この取り組みは、単なる草刈りの効率化を超えて、都市空間における自然との新しい関係性を模索する試みでもある。機械で刈り取られる草とは違い、ヤギが選ぶ草、ヤギが食べる草、ヤギが避ける草。そうした自然の営みを、都市の住民が間近で見ることができる。
12月までの期間限定とはいえ、この経験が都市住民の自然観や環境意識にどのような影響を与えるかは、今後の課題だろう。ヤギたちが去った後も、この場所が「自然と共存できる場所」として記憶に残り続けることを願ってやまない。
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