環境省は国立公園満喫プロジェクトの2026年以降の取組方針をまとめた。全国35の国立公園で、魅力的な滞在体験と自然保護を両立させ、保護と利用の好循環の実現を目指す。
日本各地に広がる国立公園は、豊かな自然を守りながら、多くの人にその魅力を楽しんでもらう場でもある。この二つをどう両立させるかは、長年にわたって問われ続けてきた大きな課題だ。その方向性を示す新たな方針が、このほどまとめられ、あらためて関心を集めている。
環境省が進めてきた「国立公園満喫プロジェクト」について、2026年以降の取組方針が示された。ここでは、このプロジェクトがどのようなものか、新しい方針がどんな柱を掲げているのか、そして背景にある課題について、順を追って整理していきたい。国立公園の将来像を考えるうえでも、見逃せない内容となっている。
「満喫プロジェクト」とは
国立公園満喫プロジェクトは、2016年3月に政府がまとめた観光ビジョンに基づいて同じ年に始まった取り組みである。環境省によれば、当初は全国から選ばれた八つの国立公園を先行地域として、集中的に整備や取り組みが進められてきた。そこで得られた成果を、全国の公園へと広げることが目指されてきた。
日本には、北から南まであわせて35の国立公園がある。いずれも国を代表する優れた自然環境を持つ場所であり、それらを厳しく守りながら、同時に訪れる人に楽しんでもらうという、二つの目標の両立がこのプロジェクトの根底にある。守るだけでも、活かすだけでも十分ではないという考え方だ。
2026年以降の方針
環境省は2026年3月、「2026年以降の取組方針」を取りまとめた。この方針では、これからのプロジェクトの進め方として、大きく四つの基本的な方向性が掲げられている。次の段階へと歩みを進めるための、いわば道しるべとなるものだ。始まりからおよそ十年の経験を踏まえた、見直しでもある。
その柱の一つは、国立公園ならではの魅力的な滞在体験を提供することである。もう一つは、国内外に向けてブランド力を高め、プロモーションを強化することで、より多くの人にその価値を知ってもらおうという狙いである。あわせて、訪れる人の満足度を高めることにも重点が置かれている。
保護と利用の好循環

三つ目の柱として重視されているのが、保護と利用の好循環の実現である。観光などによる経済の活性化で得られた成果を、自然環境の保護へと再び投資していくことで、守ることと活かすことを一つの流れとしてつなげていく考え方だ。保護と利用を対立させず、互いに支え合う関係にしようという発想である。
そして四つ目に、これまで築いてきた基本理念を継続し、さらに発展させることが挙げられている。過去の取り組みで得られた経験や成果を土台としながら、時代に合わせて中身を磨き上げていく姿勢が示されている。一過性の取り組みで終わらせない、継続性が重視されているのである。
増える来訪者
プロジェクトの成果は、数字にも表れている。環境省によれば、国立公園を訪れる外国人の数は、2015年の約490万人から、2019年には約667万人へと増加した。新型コロナウイルスの影響が広がる前まで、着実に伸びていたことがわかる。国立公園が観光の面でも存在感を増してきたといえる。
こうした数字は、日本の国立公園が持つ自然の魅力が、海外の人々にも少しずつ伝わってきたことを物語っている。宿泊や飲食などを通じて、その恩恵は公園の周辺の地域経済にも広がることが期待されている。自然の恵みが、地元の暮らしを支える力にもなりうるのである。
保全との両立という課題
一方で、来訪者が増えることは、自然環境への負荷やマナーをめぐる課題にもつながりかねない。貴重な生態系や景観を守りながら、多くの人を受け入れていくというバランスの取り方が、これまで以上に重要になっている。人気の高い場所ほど、その難しさは大きくなりがちだ。
過度な利用による環境への悪影響を避けつつ、地域にはしっかりと恩恵をもたらす。そうした持続可能な形をどう築いていくかが、国立公園をめぐるこれからの取り組みの大きな鍵を握っているといえる。次の世代に豊かな自然を残すためにも、欠かせない視点である。
今後に向けて
環境省は、今回まとめた方針に沿って、それぞれの国立公園で具体的な取り組みを進めていくことになる。保護と活用のバランスをどう取るかは、地域ごとの自然や事情に応じて、丁寧に考えていく必要がある。画一的ではなく、その土地に合ったやり方が求められている。
国立公園は、日本の豊かな自然を象徴する存在であり、次の世代へと引き継いでいくべき大切な財産でもある。守ることと楽しむことをいかに両立させるか。その模索は、これからも続いていくことになりそうだ。訪れる一人ひとりの意識も、その行方を左右することになる。

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