文部科学省の令和6年度学校保健統計で、裸眼視力1.0未満の割合が小中高すべてで過去最大に。高校生は初めて七割を超えた。スマホと近業、屋外不足の背景と、家庭でできる目の守り方を考える。
健康の話題というと、大人の生活習慣病や高齢者の介護に目が向きがちだが、いま静かに、しかし確実に進んでいる問題がある。子どもたちの視力の低下だ。文部科学省が公表した最新の調査を見て、私は正直、ここまでかと息をのんだ。黒板が見えにくい、教科書の字がぼやける。そんな子が、もはや珍しくない時代になっている。今日はこの数字の意味と、私たちに何ができるのかを一緒に考えたい。
過去最悪となった子どもの視力
文部科学省の令和6年度学校保健統計によれば、裸眼視力が1.0に満たない子どもの割合は、小学校で36.84パーセント、中学校で60.61パーセント、高等学校で71.06パーセントに達した。報道によると、これは小中高のすべてで過去最大の水準であり、とりわけ高校生は初めて七割を超えたという。つまり、いまや高校生の十人に七人が、眼鏡やコンタクトなしでは黒板がはっきり見えにくい状態にあるということになる。
十年で確実に進んだ低下
この数字は、ある年だけ突出したものではない。長い目で見ると、じわじわと悪化を続けてきた結果である。報じられているところでは、小学校で裸眼視力1.0未満の割合は、平成26年度のおよそ30.16パーセントから令和6年度の36.84パーセントへと、この十年で約7ポイントも増えている。中学校や高校でも同じように上昇の傾向が続く。一時的な流行ではなく、子どもたちの目をめぐる環境そのものが変わってきたことを、数字は物語っている。
なぜここまで増えたのか
背景として広く指摘されているのが、生活の変化である。報道でも、スマートフォンやタブレットを長時間使うこと、近い距離でものを見続ける習慣、そして外で体を動かす時間の減少などが関係していると考えられている。かつて子どもたちは、日が暮れるまで外で駆け回っていた。いまはその時間の多くが、手のひらの小さな画面に向かう時間に置き換わっている。目にとっては、かなり過酷な変化だといえるだろう。
「近く」を見続ける生活

目という器官は、遠くを見ているときが最も楽な状態だとされる。逆に、手元の近いものを長く見続けると、ピントを合わせる筋肉が緊張し続け、大きな負担がかかる。スマホやゲーム、勉強のノートやタブレット。子どもたちの一日は、この近業と呼ばれる近距離作業でびっしり埋まっている。休みなく近くを見続ける生活が、成長期の柔らかな目に影響を与えていると考えられるのは、ごく自然なことだ。
外で遊ばなくなった子どもたち
見落とされがちだが、屋外で過ごす時間の減少も見逃せない要素とされている。外の明るい自然光を浴びることが、近視の進行を抑えるうえで役立つという指摘は、以前から専門家の間で語られてきた。ところが、習い事や受験勉強、そして室内での動画やゲームに時間を取られ、子どもが外で遊ぶ時間は年々短くなっている。目を休め、遠くを眺める機会そのものが、暮らしの中から失われつつあるのだ。
視力低下は何をもたらすか
視力の低下は、単に眼鏡が必要になるという話にとどまらない。黒板や資料が見えにくければ、学習への集中も妨げられかねないし、運動や日常のちょっとした場面にも影響しうる。さらに、強い近視が進んだ場合には、将来の目の健康にかかわるリスクが高まることもあると一般に知られている。だからこそ、子どものうちに進行をできるだけ緩やかにしておくことの意味は、決して小さくないのである。
文部科学省の取り組み
こうした事態を受けて、文部科学省も対策に動いている。公表された資料によれば、子どもの目の健康を守るための啓発資料を広めることや、屋外での体験活動などを促す取り組み、さらに保健教育のためのモデル授業の動画を作成することなどが予定されているという。熱中症や紫外線への対策をしながら外遊びを呼びかける、という具体的な方向性も示されている。学校まかせにせず、社会全体で目を向けるべき課題だといえる。
家庭でできること
行政の取り組みと同じくらい大切なのが、家庭での小さな工夫である。画面を見る時間にゆるやかなルールを設けること、机やスマホと目のあいだに十分な距離をとること、そして意識して外で過ごす時間をつくること。どれも特別なことではないが、毎日の積み重ねが効いてくる。親が一方的に禁止するのではなく、なぜ目を大切にするのかを子どもと一緒に話し合う姿勢が、長続きの鍵になると私は感じている。
遠くを見て目を休める
近くを見続けたら、ときどき手を止めて遠くを眺める。これは昔から勧められてきた、素朴だが理にかなった習慣である。一定の時間ごとに画面から目を離し、窓の外や遠い景色にぼんやり視線を移すだけでも、緊張し続けた目の筋肉はいくらか休まるとされる。子どもに声をかけて一緒に窓の外を眺める。そんな何気ないひと呼吸が、酷使されがちな現代の目にとっては、ささやかな養生になるはずだ。
検査で早く気づく
視力の変化は、本人も周囲も案外気づきにくい。子どもは見えにくさに慣れてしまい、それが当たり前だと思い込むことも多い。だからこそ、学校で行われる視力検査の結果を軽く見ないことが大切だ。少しでも下がっていると分かったら、早めに眼科を受診し、専門家に相談してほしい。適切な眼鏡やケアで進行を抑えられることもある。早く気づくことが、その後の目の一生を大きく左右するのである。
デジタル社会との付き合い方
とはいえ、スマホやタブレットを完全に遠ざける時代でないことも、私たちはよく分かっている。これらの道具は学びや遊び、人とのつながりを豊かにしてくれる、いまや欠かせない存在だ。大切なのは、頭ごなしに否定することではなく、上手に付き合う知恵を身につけることだろう。使う時間と休む時間のめりはりをつけ、外の世界にも目を向ける。そのバランス感覚こそが、これからの子どもに必要な力だと思う。
子どもの未来のために
視力は一度失われると、簡単には取り戻せない。だからこそ、まだ成長のさなかにある子どもたちの目を、大人がどう守るかが問われている。過去最悪という数字は、私たちへの静かな警告だ。難しいことをする必要はない。画面を少し置いて、一緒に外に出て、遠くの空を見上げる。その小さな習慣の積み重ねが、子どもたちの未来の視界を、きっと明るく保ってくれると信じている。

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